わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
あれ――吉岡と二人で中庭にいたことについて――宮燈さんは特に表情を変えないまま言った。
「彼女から、ちょっと相談があるからと言われて連れていかれた。中身が無かったから、相談は口実なんだなと思って戻ろうとした所だった」
「ふーん……」
納得出来なくて、私はうつむいて黙った。そんなの、わかりそうなものなのに。何でついて行っちゃうの。現に吉岡は、私に向かって「橘部長と自分が、二人きりでここにいた事」をわざわざ強調してきたのに。彼女は美人で、ちんちくりんの私より遥かにスタイルもよくて、きっとモテるんだろうなと思う女の子だった。あの光景を思い出すと、悲しいような、悔しいような……物凄く嫌な気持ちになる。
沈黙を破ったのは、宮燈さんの笑い声だった。
笑い声? 宮燈さんが笑ってる?
そう思って顔をあげたら「ふふっ」と小さく笑っている宮燈さんがいた。
「まさか、君は妬いている? やきもち?」
「そ、そうです。何笑ってるんですか? バカにしてます?」
「こんなうれしいこと初めてだ。君は私が好きなのか? 私が他の女と二人きりだったことを妬く位に」
なんかバカにされてる気がする!
悔しい。
「そうですよ! 嫌でした! 宮燈さんが他の誰かと二人きりだなんて物凄く嫌!」
「私は君以外どうでもいい。でも君は私が想う程に、私の事を好きじゃないと思っていた。……だから妬いてる君が可愛い」
そう言って、私の好みドストライクの綺麗な顔でフッと笑うから、私は胸に恋の矢が百本は突き刺さったと思う。心臓が破れるんじゃないかと思うくらいドキドキしてきた。
本当に嬉しそうで、まだ口角が上がってる。こんなに笑顔が持続してるの凄い。綺麗。