わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
朦朧とする意識の中で、しっとり汗をかいてる肌が重なってるのっていやらしいなと思っていた。眠りに落ちそうだったけど、体を拭くかシャワーを借りようと、重い体を動かそうとした。でも宮燈さんが離してくれない。
「宮燈さん、私、自分の部屋に戻らないと」
「朝までここにいて欲しい」
「でも、私がこの部屋から出て行くわけには」
「私が出た後、時間をずらして君が出ればいい」
離してくれそうにない。久しぶりだし、またしばらく会えないし、仕方ないかと思って諦めてベッドに体を沈めると、安心したのか宮燈さんが少し腕の力を緩めて私の髪を撫でた。宮燈さんはよくこうして私の髪を指で弄ぶ。
「……君の髪が私に絡み付いて、私は君に囚われた」
「じゃあ、私があのエレベーターに乗らなければこうならなかったんですね」
「どうだろう、分からない。でも、ただの面接官として君に会ってたら、確かに印象は違ってたかもしれないな……」
ふと思い出したことがあって、私は宮燈さんの腕から逃れて質問した。
「……ちょっと怖いこと聞いていいですか?」
「何だろうか?」
「あの時……切った……私の髪の毛……まさか」
「捨てたふりしてポケットに入れた」
「ぎゃー! やっぱり!!」
嫌な予感が当たってたから、怖いし恥ずかしいから、宮燈さんの手から逃げるように隣のベッドに移って布団をかぶった。
「何か問題が?」
「ストーカー! 変態!」
「わかっている」
そう呟いて、宮燈さんも私のいるベッドへ移る。「離して!」と騒いでいたら「大きな声を出さないで欲しい」と言われ、黙るしかなかった。結局体を離してくれなかったから、朝まで一緒に眠ることにした。
本当に明日の朝、誰にもバレずに部屋から出られるのかな。宮燈さんは、林さんにどう言い訳するんだろうか。
やっぱりとんでもない人に捕まってしまったなと思ったが、もう好きになりすぎてるし、手遅れだと諦観するしかなかった。