わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

06. 庭

 早朝、私が起きた時、宮燈さんはまだ眠っていた。私の夫は今日も綺麗な顔をしているなあと見ていた。もしや現世の弥勒菩薩なのでは……と考えていたら、宮燈さんがぱっちり目を開けた。
 うお、開眼(かいげん)した!

「うわあ、おはようございます!」
「……おはよう。何をそんなに驚いた顔をしている?」
「今ちょっと悟りの境地が垣間見えてました」
「意味がわからない……」

 宮燈さんはそう言いながら私の頬にキスをして、首に吸い付いて痕をつける。何も着てないから、肌がくっつくと恥ずかしいし、もっと触りたくてうずうずしてくる。
 いつもされてるから、と仕返しに胸をつんつん撫でてみた。全然表情が変わらなくて悔しいから舐めてみた。くすぐったいのか、宮燈さんが逃げようとするから馬乗りになって舐めた。体が反応してるのが可愛い。

「"されること"にまだ慣れてないのに"すること"を覚えたいのか?」
「ん、何ですか、そのジャンル分け」
「されるのも悪くないが、さすがにここではやめておこう」
「今更?」
「いや……せっかくだから時間のある時にじっくりして欲しい」

 なんかいま怖い事を言われた気がする。再来週、式場での衣装合わせがあるから、宮燈さんが京都に来てくれる。何をさせられるか分かんないけど、それまでに予習しておこうと思っていた。予備知識無しで挑むのは恐ろしい。婚姻届を出した日だって、私の知らない事をたくさん試されて死にそうになったし。

 そんなことを考えていたら、腕を引かれてキスされた。軽いキスだったのに、体の芯が熱くなるのを感じていた。やっぱり私の身体はどこかおかしい。

「はじめて……」
「どうしました?」
「初めて仕事に行きたくないと思ってる」
「……行かなきゃだめですよ、"橘部長"」

 私が笑うと、宮燈さんは無表情のまま私の腰を抱えて自分の上に乗せた。触れあってるのが恥ずかしいけれど、耐えられない私が腰を揺らしたから宮燈さんが少しだけ笑った。こんな淫らに笑うのは初めて見るかもしれない。
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