永遠に咲け
「はぁはぁ……
助けて……」
鏡に写る自分を見た。
酷い顔だった。

咲愛はそばにあった、ハンドソープを鏡に投げつけた。
パリーンと大きな音がして、鏡が割れる。
その割れた鏡を見ると、余計に自分が醜く見える。
咲愛はその割れた鏡を殴った。
破片が突き刺さり、指が切れた。
それでも痛みを感じない。
それ程の心の痛みがあった。

その音に中森がトイレのドアを叩く。
「咲愛様!!大丈夫ですか!?
すみません、失礼します」
女子トイレの為、むやみに入れない。
でも只事ではない雰囲気に、中森が入って来た。

「咲愛様!!?」
「はぁはぁ……」
咲愛は、その場にへたりこむように座っていた。
右手から血が出ている。
「中森さん!助けて!!
こんな私……嫌なの!!」
中森にすがりつき、懇願する咲愛。

あまりの辛い光景に、中森も胸が抉られるように痛んだ。
咲愛を抱き締め、背中をさすった。
「大丈夫ですよ。
とりあえず、帰りましょう。手当てもしないと……
ママには、連絡しておきます。
………咲愛様、少し我慢してください」
そう言うと中森は、咲愛の手を優しく持ち上げ自分のハンカチを巻いた。そして抱き上げた。

咲愛もこの時ばかりは、素直にしがみついた。

トイレの外にいたボーイに、中森が耳打ちする。
「鏡は弁償します。
後から私宛に、請求書を送って下さいとママに伝えて下さい」
「あ、はい!」
中森は咲愛を抱きかかえたまま、出入り口に向かった。

そしてその姿が、よりによって永久の目に入ってしまったのだ。

「中森様、素敵…!」
ホステス達の声に、永久が反応する。
「中森?」
「あ、今日…久しぶりにいらしてるみたいですよ」
元美が答えた。
「一人で?アイツが、咲愛を家に置いて来るとは思えねぇが……」
「いえ、永久様の姪御様の……咲愛様と」

「は━━━?」
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