永遠に咲け
車に向かう、四人。
「咲愛様、永久様のところへ」
咲愛は中森にしがみついたまま、頭を横に振る。
「咲愛様…」

「咲愛…怒らないから、来て?」
その言葉に、ゆっくり永久の方に手を伸ばした咲愛だった。
ハンカチが巻かれている手を、優しく持ち上げキスをした。
「確か、しばらく兄貴帰ってこねぇよな?」
「はい、先週から海外へ出張してますので」
「そう。
だったら、今から俺のプライベートのマンションに行って。しばらく、二人にして。俺が連絡するまで誰も寄り付けるな!」
「いいの?」
「咲愛なら、大歓迎だから」
「……かしこまりました」

永久はマンションをいくつか借りていて、仕事で使ったりしている。
その中のひとつのプライベート用のマンションに向かった。そのマンションには普段は誰も中に入れない。永久が完全に一人になれる空間だからだ。
今日まで咲愛さえも入れなかった程の、大事な空間。
その為黒谷が一度聞き返す。
でもそんなこと、どうでもいいと思える程の激情だった。

マンションに着き、咲愛を抱き上げ向かう。
その頃には咲愛は眠ってしまっていた。
最上階に向かい、玄関を開け乱暴に靴を脱ぎ捨てベットに向かう。
ゆっくり咲愛を下ろしてベット脇に腰かけ、咲愛のハンカチが巻かれた手を掴み持ち上げた。
ハンカチを取ると、指が切れていた。
その傷口に口唇を押し当て、舐めた。

また中森に抱かれていた光景が甦った。

「はぁはぁ…」
乱暴に自分の髪を掻きむしる。
この感情をどう表現したらいいのだろう。
嫉妬以上の、怒りと憎悪。
咲愛は自分だけのモノ。
なのに、中森にすがりつくように抱かれていた。
咲愛の意思で━━━━━
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