傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
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辺境伯領で起こった真実を暴露したセリカが怒りを露わにし力を暴発させた夜、オウガは疲れ果てたセリカをベッドに寝かせ部屋を出た。その次の日の朝、俺は食堂へと急いだ。自分が監視をする中、食堂の料理人に食事を用意させるとセリカの部屋へと急ぐ。
「オウガです。入室よろしいですか?」
セリカ様の部屋のドア越しで声をかけるが返事がない。俺はもう一度声をかけると強引に部屋へと入室した。部屋に入ると目を丸くして、アタフタとするセリカ様の姿が目に入り、頬が緩みそうになる。朝食をテーブルに並べ終え、セリカ様を抱きかかえると、可愛らしい拳で胸を叩いてきた。
それで攻撃をしているつもりなのだろうか?
よく見ると顔を真っ赤にさせて、オロオロとしている姿が可愛らしくてたまらない。俺は思わず「ふっ」と笑ってしまった。それを見たセリカ様が俺の顔をマジマジと見つめてくる。警戒心が全くなくなっている。少しだけ開いた可愛い唇が自分の目の前に……。
まずい。
俺はセリカ様から目を逸らし、椅子に座らせた。赤く燃えるような瞳が俺を見つめていたが、椅子に座らせるとその瞳が目の前に並べられた朝食へと視線が移る。
食べたそうに瞳を揺らめかせているというのに手を出さないセリカ様。
俺は毒が入っていないことを証明するため、マフィンを一つ手に取ると一口くちに入れ、セリカ様に手渡した。それを受け取り、戸惑っている様子のセリカ様だったがマフィンを「はむっ」と口に入れた。
美味しそうに微笑みながらマフィンを頬張るセリカの姿にオウガは打ち震えた。手なずけられない動物が、心を開いてくれた時のような高揚感。
もっと手なずけて俺だけに心お開いて欲しいと思う。
俺の前だけでは笑って欲しいと。