傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
*
「オウガ……これはどういう状況?」
「何がですか?」
セリカはオウガが持ってきたエナットと呼ばれるオレンジに似た果物を、オウガの手ずから食べさせられようとしていた。
「皮を剥いてもらえれば、自分で食べるわよ」
「いえ、エナットは水分が多いため、手が汚れてしまいます。さあどうぞ」
オウガは右手でエナットをつまみ、セリカの口元に持ってくる。
ちょっと待って……。
なかなか口を開かないセリカ。
すると、左手で持っていたエナットの汁が手首までたれてきてしまい、オウガはそれをペロリとなめとった。その瞳はセリカを見つめたままで、見せつけるようにもう一度舐めとる。
ぐっ……。
男のくせにエロいとか意味がわかんない。
何これワザとやってるの?
それならたちが悪い。
「さあセリカ様」
セリカの唇にエナットがふれ、セリカはその小さく赤い唇を開いた。水分の多いエナットを口に含むと爽やかな酸味と甘さが口いっぱいに広がる。そのおいしさに、可愛らしく微笑めばオウガが一瞬固まりセリカを凝視していた。
オウガどしたのかしら?
一口食べ終えたセリカが首を捻ると、オウガはエナットをもう一つ勧めてくる。
「美味しいですか?」
頷くセリカの唇の端から水分の多いエナットの汁が、こぼれ落ちそうになっていた。それを見たオウガはセリカの顎をかるく持ち上げると、その唇の端にたれてきているエナットの汁を、自分の唇で吸い取った。
唇に触れているわけではないが、それでもこれはきわどい。
固まるセリカに、オウガは極上の笑顔でセリカに微笑みかけた。
「セリカ様、上手に食べないと今度を唇に触れてしまいますよ」
それはどういう意味なの?
唇に触れる?
その意味に気づきセリカの顔が真っ赤に染まっていった。
ドクンッドクンッと大きな音をたてる心臓。
何?
何なのこれ……。