傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
いても立ってもいられない、体からわき上がる感情。
セリカは目の前で微笑むオウガの顔に触れると、自分の唇をオウガの唇にそっと押し当てた。唇を離すと、瞬きもせず、こちらを見ているオウガの顔があった。
セリカはオウガのその表情にクスクスと微笑む。すると体にふわりと柔らかい感情が降りてきた。こんなに穏やかな時間……何時ぶりだろう。セリカがオウガの透き通る青い瞳をジッと見つめていると、オウガの目が見開かれた。
ん?
オウガ?
「セリカ様……瞳の色が……」
瞳の色?
オウガが何を言っているのか分からない。オウガの瞳が瞬きもせずに、自分の瞳を凝視している。
「セリカ様……瞳が赤から、紫水晶のような美しい色に変わりました」
「えっ……うそ……」
セリカは戸惑った。瞳の赤さは復讐心の表れだ。
それなのに……。
人を憎しみ、この国を滅ぼす悪女になると決めたのに。
どうして……。
セリカの美しい瞳から涙が溢れ出す。
紫水晶のように美しい瞳から涙を流し、戸惑うセリカを、オウガは優しく包み込んだ。セリカの全てを包み込む様に……大きな体躯に包まれセリカは安堵の中、ぽつりぽつりとしゃべり出した。
「オウガ……私の瞳の色は元々紫だったのよ。あいつらに両親と民達を殺されて……、復讐を決めたときに瞳の色が変わってしまった。私には復讐だけが全てだった。それなのに……オウガ、あなたは私に何をしたの?」
紫水晶の様に美しい瞳から止めどなく涙を流すセリカを、オウガは強く抱きしめた。自分の腕の中にいる女性は、一体今までどんな思いで生きてきたのか。瞳の色が変わるほどの復讐心を抱えて……。今抱えている悔しさ、辛さ、苦しみ、悲しみ、少しでも自分が癒やしてあげたい。そう思った。