傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
***
アリエント王国謁見の間にて、この国の王であるエリアノ・チェザリー・アリエントが、目の前で頭を垂れる青年に対し冷ややかな口調で話しかけた。
「それで?その話が何だというのだ?私に何の利がある?言うてみよ」
頭を垂れていた青年が顔を上げると、後ろで結わえていた金色に輝く髪がサラリと揺れた。濃い青い瞳は深海の海の様で、吸い込まれそうなほど澄んでいる。他国の王の前にいるというのに臆することなくこちらを見つめる青年は口角を上げた。
「アリエントとアイド二アの戦争を止めることは出来ないでしょう。しかし民を守り、被害を最小限に留める事が出来る方法がある。それを提案しているのです」
これから戦争を始めようとしているのに、そんなことができるのか?
エリアノはあからさまに目の前の青年に嫌な顔をした。
先ほどの聖女の話も眉唾ものだが……。
「その聖女は本物なのか?信じられない話だ……」
「信じられない気持ちは分かります。しかし、その力があちらにある限り、この戦いは苦戦しますよ。しかもこの戦の指揮をとるのは私の兄であるオウガ・ディスタールですから」
オウガを兄と言った青年は目を細めると嬉しそうに笑った。兄をよほど信頼しているのだろう。命がけで敵国であるこの国に兄からの書状もってくるくらいだ。絆も強いのだろう。
「リアン・ディスタール誓えるか?これからはアイド二アではなく、この国アリエントのため私エリアノ・チェザリー・アリエントに命を捧げること」
リアンは胸に手を当てると頭を垂れた。
「エリアノ様のためならこの命いつでも捧げる覚悟です」
「ふんっ。良いだろう、すぐに話を進めるぞ」
くくくっ……エリアノは心の中でほくそ笑んだ。
オウガ・ディスタール、お前の案に乗ってやる。