傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
*
「セリカ嬢、ご機嫌いかがですか?何か欲しいものはありませんか?」
人好きのする笑顔をセリカに向けてくるのは王太子ファルロだ。
今日は一体何しにやって来たのか?
「殿下、何故ここにいらしたのですか?私に何かご用ですか?」
「相変わらずつれないな」
ファルロは嬉しそうにセリカを自分の腕の中へと抱き寄せる。
まって……。
どうして私は抱きしめられているの?
セリカはファルロの腕の中から逃げ出そうと、ファルロの身体を両手を使ってグイグイと押し返した。
「殿下は何を考えているのですか?離して下さい」
「嫌だ……」
そう言ったファルロが暴れるセリカを強く抱きしめ、セリカの肩に顎を乗せた。いつもとは違うファルロの様子にたじろぐセリカだったが、ファルロはセリカをすぐ離すと何処かへ行ってしまった。
ふうーっ。
一体何しに来たのかしら?
『嫌だ』って……。
いつも自信に溢れた人が辛そうな声だった。
苦しそうな声だった。
ファルロが出て行った扉をボーッと眺めていると「セリカ様」と後ろから声をかけられた。
オウガいつからそこに?
どの辺りから話を聞いていたのかしら?
どうやら部屋の奥にある使用人用の扉からこちらへ入って来たらしく、なんの音もしなかった。
セリカは平静を装いオウガに歩み寄ると声をかけた。