傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
セリカは歌い続けた。
全ての力を使い命をかけて歌い続けた。
「セリカ嬢、やめるんだ!!これ以上歌ったら命の危険性がある」
そう叫んだファルロが拘束された状態でセリカに近づこうとしたが、見えない壁のような物が張られており、誰も近づくことが出来ない。
「何なんだ、これは!!セリカ嬢、やめるんだ。止めてくれ!!」
ファルロが悲痛な叫び声を上げるが、その声を無視して聖女の力を使うセリカの体から、光の粒子があふれ出した。光の粒は銀色に輝きセリカとオウガを包み込む。
オウガどうして目を開けてくれないの?
声を聞かせてくれないの?
癒しの歌を歌っても変化の無いオウガを見つめ、セリカは癒やしの歌を止めた。
セリカは癒しの歌から愛の歌へと歌詞を変える。
**~
ずっとあなたを見つめている
側にいると決めたあの日
未来を夢見て手を取ろう
愛しいあなた
二人で幸せになろう
あなたと二人なら
永久に……永遠に……
**~
そこまで歌うと、セリカは涙を流し空を仰ぎ見た。青く透き通るような空はまるでオウガの瞳の色のようで更に涙が溢れ出す。
オウガ大好きよ。
セリカは最後にありったけの力を込めて声を出した。低音から高音の音を、一気に体から吐き出すように響かせていく。すると光の粒子がセリカの胸に集まった。それは目を開けていられないほどの光となり飛散し、銀色に輝く粒子がこの戦場だけでなく、世界中に広がった。
キラキラと輝く癒やしの光は世界中の人々を癒やした。怪我や病気で苦しむ人を救い。心を病む人を癒やしていく。
この奇跡に人々は涙し、膝を折り手の平を合わせ祈った。
頭を垂れる人々の耳に聖女の歌声が聞こえてくる。
それは、それは、美しい歌声。
悲しくも美しい歌声にセリカの思いが乗せられていた。オウガを救いたいというセリカの思いが……。
その思いに答えるように人々は祈りを捧げた。この奇跡の力を引き起こしてくれた聖女を思い、今度は自分たちが聖女の力になりたいと。
世界に広がった光の粒子が再びセリカの元へと集まると、セリカとオウガを包み込む。そこでセリカは力尽き、オウガに覆い被さるように倒れた。