傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!

 そう言ってリレイニアが手をかざすと、セリカの前に横たわるオウガが現れた。

「オウガ!!」

 セリカは震える手でオウガの頬に触れた。

 オウガ……冷たい……。

 氷のように冷たくなった頬を撫でるとセリカの瞳に涙の膜が張る。

 間に合わなかった……。

 聖女の力を使い果たしても、この命に代えても助けたかったのに……。

 セリカの瞳から流れ出した涙が頬をつたい、オウガの頬に落ちた。

『セリカ、そんなに泣かないで』

 リレイニアはオウガの額に手を乗せ、何かを囁いた。するとオウガの体が光り出しす。

 オウガ……。

 少しずつ温かくなっていくオウガの体を抱きしめセリカは叫んだ。

「目を覚まして、オウガ、オウガ、オウガ!!」

 ポタポタと落ちるセリカの涙が更にオウガの頬をぬらし、その顔がかすかにピクリと動いた。

 お願い……あなたの声が聞きたい。

「セリカ……」

 かすれた声だったが、それは紛れもなくオウガの声だった。

 オウガの声だ……私の大好きなオウガの声。

 声を発したオウガの瞼がゆっくりと開くと、 透き通る青い瞳が私を映し出した。

「オウガーー」

 セリカはあふれ出す涙を止めることが出来なかった。



 もう、会えないと思った。

 声が聞けないと思った。

 あなたの美しい瞳の色を確認出来ないと思った。

 あなたの温かさを感じることが出来ないと思った。


 うれしい……。

 嬉しい、嬉しい、嬉しい。


「オウガ……オウガ、オウガ、オウガ」



 セリカは愛しい人の名前を何度も、何度も、呼び続ける。

 愛しい人の名前を呼べる嬉しさを噛みしめて。




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