傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
「オーっほほほほほほ……まあ、一体何があったのかしら?なんて面白い余興ですこと……」
この女は苦しんでいる侍女に何を言っているんだ?
何も言わない侍女に向かってセリカは、聖女とは思えない発言をする。
「オーっほほほほほほ……バカな子ね。私は聖女でもあなたは助けてあげないわ。さあ、行くわよオウガ」
なんて女だ。聖女のくせに目の前で苦しんでいる者を見捨てるとは……。オウガは怒りで震える両手の拳を握りしめながらセリカの後を追った。するといつものように中庭の東屋の中に入って行ってしまった。
オウガはその様子をいつものように少し離れた場所から眺めていた。
あの侍女は大丈夫だっただろうか?
それにしてもあの発言はあまりにもひどすぎる。聖女の力を持って生まれてきた者が聖女の力を使わぬなど、力の持ち腐れだ。戻って侍女を助けるように進言しようとオウガは初めて東屋に近づいた。
そこで目にしたのは……。
顔を伏せ涙するセリカの姿。
「もう嫌だ。わかっていたのに……怖い」
わかっていた?
わかっていたとは何だ?
俺は目の前で震える女を抱きしめたいという衝動に駆られ、グッと足を踏みこんだ。そのせいで剣のさやがガチャリッと音を立ててしまう。その音に驚いたセリカがこちらを振り向き、睨みつけてきた。その瞳が炎のようにゆらゆらと揺れ、綺麗だと思ってしまう。
いつもと態度を変えずに冷たい言葉を吐き出すセリカだったが、オウガの耳には辛い、寂しいとしか聞こえない。
これはどういうことなのかと聞いても悪態をつくばかり。
「何をしたかですって?あなたはずっと見ていたでしょう。それともあれは私の仕業だとでも?」
両手を握りしめ、こちらを睨めつけている瞳が怒りに燃えている。
俺は強く握りしめられているセリカの手を取ろうと手を差し出した。するとその手をセリカは払いのけ声を荒げる。
「なんのつもりですの?私に触れないでちょうだい」
そう言ったセリカの顔は辛そうに歪んでいて、オウガはそれ以上セリカに触れようとはしなかった。