傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
*
セリカは自室のバルコニーから白銀色に輝く月を眺めていた。
前にもこんなことがあったわね。
あの時はオウガと二人、甘い時間を過ごした。そして聖女の真実を話して……。オウガが悲しそうな顔をしたんだったわ。
あの時は、未来にこんな幸せが待っているなんて思いもしなかった。私は今回の戦争で死んでしまうと思っていたから。
セリカはいつものように月に話しかける。
「あなたは知っていたの?未来に幸せが待っていることを……。ねえ?あなたは幸せ?私は幸せよ。オウガがいてくれるから……」
そこまで話して、誰かに後ろから抱きしめられた。
誰かじゃない。
私の大好きな人に。
「オウガ……」
「はい……」
ほんの少し二人の間に沈黙が流れた。しかし、その沈黙は不快な時間ではなく、幸せな時間だった。背中にオウガの鼓動を感じる。
生きている。
セリカは自分のお腹の前で組まれているオウガの手にそっと触れた。するとオウガの体に力が入ったのを感じた。
オウガ?
セリカが振り返ろうとしたところで、オウガがセリカの耳元で囁いた。
「セリカは、月と話しているときは素直だな……」
「えっ……?」
その声はいつもより低く、不満を表しているようで……。
まさか……。
「月に嫉妬?とかではないわよね?」
思わず出てしまった声にセリカは口を押さえると、オウガの体がピクリと跳ねた。
えっ……。
ホントに?
そっと、オウガの方へ振り返ると、オウガは今まで見たことがない顔をしていた。
オウガの顔……真っ赤っか。
それを見たセリカの顔もつられて赤くなる。
心臓が跳ね上がり、早鐘を打っていく。
同時に愛おしさがこみ上げてきた。
すき……。
オウガ、大好き。