傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!

「セリカ……好きだ」

 耳元で響くオウガの声。

 同じ事を考えていた。

 体ごとセリカはオウガの方へ振り返り「ふふふっ」と笑う。

「オウガ、私も大好きよ」

 嬉しそうに微笑むセリカを見つめ、オウガの瞳が熱を帯びたような色へと変わっていく。オウガの男性的な薄い唇がついばむように、額、瞼、頬と降りてくる。

「セリカ、目を閉じて」

 目をそっと閉じれば、次にされることは……。

 キス。

 優しく重ねられる唇。

 角度を変え、何度もついばむような口づけが終わると、自分のものとは違う男性の舌が口の中へと入って来た。突然の事に思わず体を強ばらせたが、オウガの手が優しく背中を撫でてくれているため体から力が抜けていく。自分のとは違う厚い舌を受け入れると、甘い声が漏れてしまう。

「っん……あっ……んっ……」

 とろけるような優しい口づけ。



 なんて幸せなんだろう。



 沢山の出来事があった。

 両親を殺され、領民を虐殺され。

 悪役を演じ、この国の悪女になろうとした。

 復讐に燃える赤い瞳を毎日見つめていたのに……。

 オウガが現れて、愛することを、愛される喜びを知った。

 どんなにどん底で絶望の淵に立たされても、生きることを諦めなくて良かった。


 白銀に輝く月明かりの下、二人の陰が重なり合う。

 それはとても幸せそうに……。

 二人の姿をセリカの親友である月だけが見つめ、見守っていた。



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