傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
それから一カ月後、ファルロは王名を受ける。それはフィールド辺境伯領へ行くため付いて来いというものだった。
フィールド辺境伯領、そこには会いたかった聖女がいる場所。
俺は心が高揚するのを感じた。こんな風に一人の女性を思い、心躍るなんて初めてのことだ。
フィールド辺境伯領に着くと、王族を迎えるための大人たちの列に、可愛らしい少女の姿があった。白銀の美しい髪に紫水晶の様にキラキラと輝く瞳……俺は一瞬で少女に心を奪われていた。少女はセリカ・アシュ・フィールドど名乗ると可愛らしくはにかみ頬を染める。
本当に可愛らしい。
フィールド辺境伯領に来てからの俺はセリカ嬢の気を引くため必死に話しかけ、一緒に散歩をしたり、お茶をしたりと穏やかな時間を過ごしていた。
幸せな時間だった。
俺の生きた人生で一番……幸せで、楽しく、穏やかな時間だった。
それなのに……。
その幸せな時間が一気に崩れ去る。
*
王が俺に視線を投げる。
それはセリカの両親を殺せという、無言の圧。
俺は剣の鞘を握りしめ奥歯を噛みしめた。
そして俺は最悪の選択をしたんだ。愛する人の心を踏みにじり、自分の保身のために剣を抜く。
この時の俺はどんな顔をしていただろうか。
恐怖で固まる辺境伯夫妻を見つめ、剣を振り下ろした。
自分の手が血に染まっていく。
もう落ちるしかないんだ。セリカ嬢はもう俺を見ることはないだろう。
自分でその手を……放してしまったのだから。