傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
どれぐらい走っただろう?いつの間にか沢山のビルが立ち並ぶ街の中をウロウロと歩いていた。疲れた体と、アスファルトに焼かれた肉球を休ませるため、ひとまずビルの間にある日陰に逃げ込んだ。日陰のアスファルトはヒンヤリとまではいかないが、アスファルトに焼かれた肉球を休めるにはちょうどよかった。
体を丸めて休んでいると辺りに雨の匂いが立ち込めてくる。夕立でも来るのか?そう思った時、鼻先に冷たい雨粒が落ちてきた。一粒だった雨粒が重なるように空から落ちてくると、体はあっという間にずぶ濡れとなってしまった。
ここでは雨をしのげないため、俺はゆっくりと立ち上がるとトボトボと歩き出した。雨を吸った毛は汚らしさを倍増させ、道行く人々が俺を見て嫌な顔をするのがわかる。ぼろ雑巾やモップが歩いているようにでも見えるのだろう。
雨を吸った体がやけに重い。食事を一度くちにしたと言っても、数日食べていなかった体はエネルギー不足だった。それに家から出たことのなかったこの体は筋力、体力が全くない。
もう限界だ。
道の端に力なく寝そべると、体を雨が叩き付けてくる。
打ち付ける雨が痛くてもなすすべがない。
ああ、疲れた……眠りたい。
俺は眼を閉じ、その時を待っていた……その時だった。
ふっと、体を打ち付けていた雨の痛みを感じなくなり、雨が止んだのかと耳を澄ます。しかし雨がアスファルトを叩く音は聞こえてくるため雨が降っていることは明確。
何故だ?
雨が体を打ち付けなくなった原因を俺は確認するため、瞼を一瞬開いた。その瞳に映ったのは、銀色の髪……。
セ……リ……カ……嬢……。
そのまま俺は意識を手放した。