傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!

 *

「ファルーお散歩行こう」

 そう声をかけてきた蓮に俺は答えるように「ワンッ」と大きく鳴いてみせる。日課になった蓮との散歩の時間だ。




 あの日セリカ嬢達に助けられた俺は食事を与えられ、風呂に入れられた。モップのように絡まった毛玉はセリカ嬢達ではどうにも出来ず、次の日ペットショップに連れて行かれトリミングされた。絡まった毛をカットされていくと体が軽くなっていく。トリミングを終えた俺が外に出るとセリカ嬢達が嬉しそうに迎えてくれた。

「ママ~このこ、ファルたん?」

 全く違う犬のようになった俺をみて、唯が怯えたような声でセリカ嬢の足にしがみついている。俺は安心させるように唯に擦り寄り「くぅん」と鳴いて見せると、それを聞いた唯が「ファルたんだ」と首に抱きついてきた。

「芹花、ファルはきれいになったようだな?」

 そう言ってセリカ嬢の肩をオウガが抱き寄せた。

 何かが気に入らない。

「凰雅さん、ありがとうございます。ファルを飼うことを許可してくれて、子供達も喜んでいて……私も嬉しいです」

 花が咲くようにセリカ嬢が微笑んだ。



 この世界でセリカ嬢は芹花、オウガは凰雅、俺ファルロはファルと名前を与えられた。前世と類似した名前。神は何を考えているんだ。何の因果か、見えない絆……縁でもあるのだろうか?三人がこうして出会ったのは運命か?

 しかし今は芹花の肩を抱き寄せる凰雅の腕が気に入らない。

 俺は凰雅のズボンの裾に噛みつき引っ張ると二人を引き剥がしにかかった。

 それから俺の毎日は楽しいものだった。二人がラブラブしていると間に割って入り邪魔をしてやる。初めこそ嫌な顔をするだけの凰雅だったが、最近は青筋を立てて怒りを露わにしてくる。すると俺は尻尾を丸めて震えながら芹花に擦りよった。おまけに「くぅん」とひと鳴きすれば、凰雅は芹花に諫められる。

 ぷぷぷ……いい気味だと思わず笑みが零れた。

 その後、どや顔で凰雅の前を闊歩すれば、更に青筋を立てた凰雅がプルプルと震えているのが視界に入ってくるが、それは無視してやる。


 ホント、いい気味。

 ぷぷぷ。




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