傲慢?ワガママ?悪役令嬢?それでかまわなくってよ!~聖女の力なんて使ってやるもんですか!!
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楽しい日々はあっという間に流れて行き、俺がこの家に拾われて三年の月日が過ぎようとしていた。長男の蓮は小学校に通い始め、妹の唯は舌っ足らずな言葉遣いは何処へやら、しっかりとした言葉を喋るようになっていた。
今日俺たちは家族全員で散歩をしていた。最近凰雅は忙しいらしく、こうしてみんなで散歩をするのは久しぶりだった。後ろを振り返ると、唯を挟んで芹花と凰雅が手を繋いでいた。楽しそうな家族を見つめ浮かれた俺は、手綱を持つ蓮をグイグイと引っ張った。
そこへ一台のトラックがけたたましいブレーキ音と共に突っ込んできた。いち早くそれに気づいた俺は蓮の持っていた手綱を引き寄せ、手綱が蓮から離れたのを確認し蓮を突き飛ばした。
身体に『ドンッ』という衝撃が走り、体が宙を舞うとトラックの向こう側で蓮が膝をついたいるのが確認できた。どうやら無事のようだ。意識がフワフワとしている……時間がゆっくりと動いているようだ。反対側に顔を向けると口元を両手で押さえる芹花と血相を変えて駆け寄る凰雅の姿があった。
それをスローモーションのように見つめていたが、次の瞬間、体が地面に叩き付けられ、ゴロゴロとアスファルトの上を転がっていくとフワフワとしていた意識が鮮明となっていく。
「蓮!!大丈夫か!?」
凰雅の声で、膝を付き放心状態になっていた蓮が泣き出した。
「パパー怖かったよー」
息子が無事なことを確認し、凰雅が胸を撫で下ろすと芹花も蓮を抱きしめて涙を流していた。三人が抱きしめあっていると、立ち尽くし、震える唯の声が聞こえてくる。
「ママー……。あそこにいるの……ファルちゃん……?」
三人の視線の先には血まみれでぐったりとしたファルの姿……。
「ファルーーーー!!!!」