強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
部長の手を掴んだまま、向井を振り返る。

「…向井、ごめん…向井のことは、本当にずっと好きだった。でも、さっき女子に囲まれてる2人を見て私がヤキモチを妬いたのは、向井に対してじゃない。部長に対してだった…」

向井の顔をまともに見れず、ひたすら赤い絨毯の碁盤の目のような模様を見つめて続ける。

「いつから気持ちが変わったのかは分からない…でも今一緒にいたい、大切にしたいって思うのは、向井じゃなくて部長なの…」

ぐっ。

下唇を噛み締め意を決して視線を上げると、瞳に悲しみの色を滲ませて寂しそうに微笑む向井と目が合った。

向井のこんな顔、初めて見る…

そして、今向井にこんな顔をさせているのが自分なんだと思うと申し訳なさでいっぱいになる。

「…何となく、分かってた。あの同期会の後から俺、三好のこと意識して見るようになったから。だから、三好が誰を見てたか、気付いてた」

同期会の後から…

少なくとも、私はその頃にはもう部長に惹かれていたんだ…

自分で気付くよりも早く、向井に気付かれてしまう程に、心は部長に向かっていたんだ。
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