強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
すると、私の髪を梳く部長の手が止まり、はは!と破顔する。
今はもうなんか自然に名前で呼ばれちゃってるけど、そういえばあの日に初めて一華って呼ばれたんだったなぁ…
「…あのキスには、"早く俺のこと好きになれよ"って念込めたから。ばっちり効いたな」
ニヤリと笑う部長。
…はい、ばっちり効きました。
「って、あんなキスされて、意識しない方がムリじゃないですか⁉︎」
「はは!ちなみにあん時一華呼び出したの、全然人選ミスじゃないから。お前に来て欲しくて呼んだ。だって、もう本気の恋愛はいーやって思ってた俺を本気にしたの、一華だから」
ニヤリ顔が成りを潜め、今度は愛おしそうに目を細めて真っ直ぐに私を見つめる。
「…俺の、心に決めた女」
部長は耳に心地良いその声で、静かに、でもはっきりとそう言った。
"俺を本気にした女" "心に決めた女"
あの時胸にズドンと来たセリフは、本当に私に向けられていたセリフだったんだ…
告白する度に告げられるというそのセリフは、相手を傷つけないための、それでいて好感度を上げるためのただの振り文句だと思っていた。
まさか、それも私のことだったなんて。
「…部長は私にベタ惚れですね?」
ちょっと恥ずかしいから茶化し気味でそう言うと、
「あぁ、悪いかよ」
ちょっと拗ねたような返事が返ってきた。