強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
「…何か?」
「お前、今日メガネなの?」
「…コンタクト入らなくて」
「…ふーん、メガネ姿もなかなか…」
なんて言いながら急に一歩近づいてくるから、私は勢いで反射的に一歩後ずさる。
が、そんなに広くない会議室の、コの字型に並べられたテーブルの真ん中に脚立を置いて蛍光灯の取り替え作業をしていたもんだから、一歩下がったら太腿にテーブルが当たり、そのままぐらっと上体が後ろに傾いた。
「…っおいっ」
ぐいっ!
ガチャ。
部長が私の腕を取り引っ張ったのとドアが開いたのと、ほぼ同時だった。
強いて言えばちょっとだけドアが開く方が遅かった。レイコンマ何秒か。
だから、今入ってきた人物が目にしているのは、きっと部長と私が抱き合ってる姿。
いや、なにも本当に抱き合っている訳じゃない。
倒れそうになった私の腕を部長が引っ張って、その反動で私が部長の胸に倒れ込んだだけのこと。
事実はそうだとしても、誰もいない会議室でこれは、よからぬ誤解を生みかねない。
慌てて部長から離れる。