強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
そのがっしりした胸板と、柔軟剤なのか香水なのか部長に似つかわしくない優しい香りにドキドキしたのは、もはや不可抗力である。


「部長、まーたうちの三好にちょっかい出してんすか」

呆れたようなその声は、聞き覚えがある。
というか、よく知っている。

「向井か。こいつ、おっちょこちょい過ぎるぞ。俺いなかったら盛大にひっくり返るところだったぞ?」

私を指差して後ろの向井を振り返りながら言う。

…いや、元はと言えばあなたが急に近づいて来たせいですからね?

「あー、三好のおっちょこちょいは今に始まったことじゃないですからね。俺、いろいろネタ持ってますけど、部長、聞きます?」

「おー、聞く聞く」

「…向井、余計なことは話さなくていいから!
っていうかこれから会議なんですよね⁉︎もう、ちゃんと仕事して下さい!」

顔が赤くなってる自覚はある。

向井には昨日フラれたばかりだし、それに加えて不可抗力とは言えこんなシーンを見られたとあってはいたたまれない。

急いで脚立を畳んで肩に担ぎ、反対の手には古い蛍光灯を持って、おー、逞しいなーと言う部長の呟きを背に、それでは私はここで!と逃げるように会議室を後にした。
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