強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
フラれてるのに。

「じゃあさ、適当な気持ちじゃなかったらいい?俺が本気だったら?」

ちょ、何を言い出すんだ小野は。

…でもちょっと興味がある、向井が何て答えるか。

うーん…

口許に手を当てて思案している向井。

肩を抱き寄せられたままの状態で、チラリと向井の横顔を斜め下から見やる。向井のこの横顔のラインがセクシーで好きなんだよなー。

…いや、いかんいかん、フラれてるんだって私は!

しっしっ、と頭の中の邪念を追い払っていると、

「…小野にはやんない」

ぼそっと呟く向井の声がダイレクトに耳に届いた。

「なんだよ、本気でも結局ダメなのかよ!」

「小野に三好はもったいねー」

私を抱く向井の手に僅かに力が篭ったのが分かった。

がくっ!と大袈裟に項垂れる小野を見ながら、またそういうことを…と思う。

何度も言うようだが、フラれているからこそもう勘違いはしないけれど、向井は思わせぶりが過ぎる。

自分が私を振ったことを、お忘れでないだろうかこの男は。

「…うん、私も小野はパス」



それでもドキドキする鼓動に静まれ、静まれ、と念を送りつつ、絞り出した声は、私は、ちゃんと普通を装えていただろうかーー。
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