強引上司は虎視眈々と彼女を狙ってる【7/12番外編追加】
それにLINEで既にお礼言ってもらってますし…とごにょごにょ付け加えると、

「直接言いたかったんだよ」

眉尻を下げて優しく微笑み、私の頭をガシガシ撫でる。

なんだろう。

私はこの手とこの笑顔に弱いらしい。

「じゃ、俺もう行かねーと。これから取引先とランチミーティングなんだ」

ランチミーティング…

なんてお洒落な響き。

総務部には無縁の世界だな…

なんて思っていると頭に乗っていた手が頬に下りてきて、次の瞬間にはちゅ、と触れるだけの優しいキスを落とされた。

それは、ほんの一瞬の出来事だった。

じゃあな、そう言って非常階段の扉に消えて行った部長の残像を眺めながら、ヘナヘナヘナ、とその場にしゃがみ込む。

…今の、なに…?

どういうこと…?


混乱の中、優しく触れていった唇の感触を確かめるように、私は自分の指でそれを撫でたーー。



ーーその様子を、1つ上の階の非常階段から向井が見ていたことを、私は知る由もなかった。
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