神殺しのクロノスタシスⅢ
「あとねー、ツキナに問題はたくさんあるけど」

「えっ、そ、そんなにたくさんあるの…?」

「あるねぇ」

まず第一に、俺の横に座ってるところとかね。

「本当にイーニシュフェルトの生徒か?って思うほど、火力低過ぎ」

「うぐっ…」

「炎魔法はガスバーナー、氷魔法は雹、風魔法は扇風機程度だったよ。いやぁあれで戦おうなんて。何なら一般人でも倒せるんじゃない?」

「うぬぐぐ…」

悔しそうな顔が面白いね。

とはいえ実際、俺、魔法使わずに勝ったし。

足払い一つで勝てたよ。

いくら何でも、あれじゃあ火力不足過ぎる。

魔導適性のない『八千代』じゃあるまいし。

「ツキナってさー」

にやりと笑って、ツキナの顔を覗き込む。

「…本当に魔導師?」

「う…う…う…」

ぶわ、とツキナの瞳に涙の粒が浮かんだ。

あ、ちょっと言い過ぎた?

「ふぇぇぇぇん!私だって分かってるよ~!」

自覚はしてるんだ。

「ちょっと、まず…魔導人形相手に訓練してみる?」

俺は、稽古場の物置から、魔導人形を一体、拝借してきた。

対人の前に、まず魔導人形相手に訓練した方が良い気がする。

「はい、これに向かって魔法使ってみなよ」

「うん…」

半泣きのまま、ツキナは立ち上がった。
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