神殺しのクロノスタシスⅢ
「え、えっと…。ごめんね、呼び出しちゃって…」

「…」

「折角のお休みなのに、ごめんねっ…。あの、おはぎ…。おはぎ用意してあるんだよ!私はあまり好きじゃないんだけど…」

シルナ、必死。

同席している令月を、敵がい心丸出しで睨み付けるすぐりを、何とか宥めようとしている。

おはぎで釣ろうとするな。

あと、お前の好みは聞いてない。

「と、とにかく食べよう!まずはおはぎ食べよう!お茶淹れるから、ね!皆座って!」

「あ、これなかなか美味しいですよ学院長」

「ナジュ君!?何で一人で先に食べてるの!?」

…相変わらず、こいつはマイペースだな。

早くも会議がめちゃくちゃになりそうだ。

この様子じゃ、すぐりが「下らない」と逃げ出しかねない。

「…さっさと本題に入ろう」

「そうですね」

俺とイレースは、さっさと席につく。

いつの間にか、令月もちょこんと正座していた。

様式の椅子に正座する男、令月。

普通に座れよ。

お前はその方が楽なのかもしれないけどさ。

「ほら、シルナとすぐりも、早く座れ」

「お…おはぎは…?」

「そんなもん後だ後!話を先に済ませるぞ」

「後!?私和菓子あんまり好きじゃないけど、すぐり君が好きかと思って、分身飛ばして王都の有名店にわざわざ買いに、」

「下らないことで分身を使うな。あとうだうだ言ってないではよ座れ!」

「ふぇぇぇ」

何涙目になってんだ。気持ち悪い。

それから。

「…すぐりも座れ。令月が目障りなのは分かるけど、今は一時休戦中だろ」

「…分かってるよ。別に」

そう言って。

すぐりは、令月の顔が見えない位置に着席した。

…そんなに嫌いか。そうか。

切ないな。

「さて、それじゃあ話し合おうか…。すぐりと一緒に来た、もう一人の暗殺者について」

忘れてはいけない。

令月を付け狙う暗殺者は、すぐり一人だけではなかったのだ。
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