神殺しのクロノスタシスⅢ
「君達が知りたいのは、『玉響』のことだよね?」

「『玉響』…」

…確か、そんなこと言ってたな。

それが、もう一人の暗殺者の名前。

「その子が、君と一緒に令月君を殺しに来た子?」

「そ。まぁコードネームだけどねー。本名は知らないね」

そうだろうよ。

あれだけ目の敵にしてた、令月の名前すら知らなかったくらいだ。

たかが「同僚」なんて、コードネームくらいで充分なのだろう。

「ちなみに、コードネームを与えてもらえるのは、俺や『八千代』みたいな『終日組』だけだよ」

「…『終日組』?」

「そーそー。格好良い名前だろ~?それになるの大変なんだけどね」

…。

「その『終日組』っていうのは…『アメノミコト』でも上の方の人達?」

と、シルナ。

「まぁ、例えるなら頭領様のお気に入り集団、ってところかな。『アメノミコト』でも、限られた人数しかいない。コードネームを与えられるのも『終日組』だけだよ。残りの有象無象は、精々番号で呼ばれるくらい」

「…」

…残りの、有象無象。

先日、学院を奇襲してきた暗殺者達のことか。

今更ながら、罪悪感が湧いてきた。

黒子みたいに顔を隠していたから、分からなかったが。

彼らは名前すら与えられず、番号で呼ばれ。

使い捨ての駒のように、使われて死んでいった。

令月でさえも、あれだけ酷い目に遭ったと思ってたけど…もっと酷い目に遭って、名前すらなく死んでいった人もいるんだろう。

「その『終日組』は…何人くらいいるの?」

「知らないねー。そう多くはないと思うけど」

「そう…」

メンバーであるすぐりでさえ、把握していないと。

なら、俺達が把握しているのは、現状三人ってことか。

令月と、すぐりと、その『玉響』って奴。

「『玉響』君も…令月君や君みたいに、子供なの?」

「年齢なんて知らないよ。まぁ、見た目からして…俺や『八千代』よりは、一つ二つ大人かな?」

「…」

…それは、大人とは呼ばない。

成程。

三人しか把握していないものの、その『終日組』っていうのは。

まだ歳の若い、少年暗殺者の集まりなのかもしれない。

いや、それとも…。

「…子供を差し向ければ私達が躊躇すると思って、わざと年端の行かない暗殺者を回している可能性はありますね」

俺の懸念を、イレースが口にした。

そうだな。

相手が子供だったら、俺達が油断すると思って…わざと子供の暗殺者を刺客として選んでるのかもしれない。

いずれにしても、胸糞悪いことには変わりない。

「それはともかく、一番気になってることを聞きましょうよ」

と、ナジュ。

「え~?照れるなぁ。俺の何が一番気になるの?」

含みのある言い方をするな。

「『玉響』ってのは、強いのか?」

「知らな~い」

「…」

…こいつ。

わざと、俺達をおちょくってるんじゃなかろうな。
< 122 / 822 >

この作品をシェア

pagetop