神殺しのクロノスタシスⅢ
キエルは、僕が『アメノミコト』の運営する暗殺者養成学校に入学したときの、同級生だった。
後に、「蟲毒の試験」で潰し合いになるであろう同級生。
自分が生き残る為に、他人を殺さなければならないあの世界で。
常に、殺伐とした…張り詰めた空気の漂った、あの学校で。
どうして、彼女のような人間がいたのか、今でも分からない。
あれはきっと、彼女の生まれ持った、生来の性質だったのだろう。
キエルはいつだって、笑顔を絶やさない人だった。
今月末の試験で、対戦相手になるかもしれないのに。
殺し合いになるかもしれないのに。
彼女は優しかった。誰にでも優しかった。
そして、僕の唯一の友達だった。
あれはいつだったか。いつかの試験で、僕は重傷を負った。
対戦相手はちゃんと殺した。僕が勝った。
でも、戦いは僅差だった。
僕は勝ったけれど、僕自身も深手を負わされ、死にかけていた。
対戦の後、一応の治療はされるものの。
今を生き延びたって、所詮僕達は、来月には死んでるかもしれない、使い捨ての駒。
一人二人余分に死んだって、誰も困らない。
補充なんて、いくらでも効く。
人身売買の商人なんて、ジャマ王国にはいくらでもいる。
売りに出される子供達は、もっとたくさんいるのだ。
僕一人が死んだからって、誰も困らない。
治療されても、僕の傷は治らなかった。
傷口は開き、血と膿が出て、じくじくと痛んだ。
身体は燃えるように熱く、起き上がることもままならなかった。
そんな様子の僕を見ても、クラスメイトも、「先生達」も、何も言わなかった。何もしなかった。
どうでも良いからだ。
死はいつだって隣り合わせで、日常茶飯事で、今日を生き残ることは試練のようなもので。
生き延びられず、命を落とすことなんて。
何一つ、珍しいことではなかった。
ましてや、クラスメイトにとっては、僕が試験と関係ないところで死ねば、自分が生き残る一人になれる可能性が上がる。
だから、余計に重傷を負った僕を、遠目に眺めているだけだった。
…ただ一人、キエルを除いては。
後に、「蟲毒の試験」で潰し合いになるであろう同級生。
自分が生き残る為に、他人を殺さなければならないあの世界で。
常に、殺伐とした…張り詰めた空気の漂った、あの学校で。
どうして、彼女のような人間がいたのか、今でも分からない。
あれはきっと、彼女の生まれ持った、生来の性質だったのだろう。
キエルはいつだって、笑顔を絶やさない人だった。
今月末の試験で、対戦相手になるかもしれないのに。
殺し合いになるかもしれないのに。
彼女は優しかった。誰にでも優しかった。
そして、僕の唯一の友達だった。
あれはいつだったか。いつかの試験で、僕は重傷を負った。
対戦相手はちゃんと殺した。僕が勝った。
でも、戦いは僅差だった。
僕は勝ったけれど、僕自身も深手を負わされ、死にかけていた。
対戦の後、一応の治療はされるものの。
今を生き延びたって、所詮僕達は、来月には死んでるかもしれない、使い捨ての駒。
一人二人余分に死んだって、誰も困らない。
補充なんて、いくらでも効く。
人身売買の商人なんて、ジャマ王国にはいくらでもいる。
売りに出される子供達は、もっとたくさんいるのだ。
僕一人が死んだからって、誰も困らない。
治療されても、僕の傷は治らなかった。
傷口は開き、血と膿が出て、じくじくと痛んだ。
身体は燃えるように熱く、起き上がることもままならなかった。
そんな様子の僕を見ても、クラスメイトも、「先生達」も、何も言わなかった。何もしなかった。
どうでも良いからだ。
死はいつだって隣り合わせで、日常茶飯事で、今日を生き残ることは試練のようなもので。
生き延びられず、命を落とすことなんて。
何一つ、珍しいことではなかった。
ましてや、クラスメイトにとっては、僕が試験と関係ないところで死ねば、自分が生き残る一人になれる可能性が上がる。
だから、余計に重傷を負った僕を、遠目に眺めているだけだった。
…ただ一人、キエルを除いては。