神殺しのクロノスタシスⅢ
…試験監督だった。
試験監督が、風魔法の刃で、キエルの首を撥ね飛ばしたのだ。
キエルの生首が、生気を失った目が、虚ろに虚空を眺めていた。
僕はキエルの返り血を全身に浴びながら、ただ呆然としていた。
目の前で起きたことが、信じられなかった。
しかし。
試験監督は、無情だった。
「×××番、戦意なしと判断。反則とみなし、不戦勝として、×××番を勝者とする」
「…」
僕は、勝った。
キエルが負けて、僕が勝った。
キエルから戦意がなくなった時点で、試験監督はキエルを「敗北した」と判断したのだ。
そして、その判断は正しかった。
すんでのところで、感情に流されて人を殺せない暗殺者など、暗殺者と呼ぶこともおこがましい。
こうして、僕はキエルを殺すことなく、勝ち残った。
キエルは勝負に勝ったのに、殺し合いに負けて、死んだ。
そして何故だが、キエルの代わりに、僕が最後の一人になった。
死んだキエルの為に、僕がキエルの分まで生きようと思ったから?
生きることが、キエルに対する罪滅ぼしになると思ったから?
違う。
僕は、己のやるべきことを再確認しただけだ。
考えるべき、決断を下すべきときに、正しい判断をしなければならないのだと。
キエルは、判断を間違えた。
いくら強くても、いざというとき判断を間違える者は、結局弱者だ。
淘汰されるべき人間に成り下がるのだ。
キエルが、そうだったように。
キエルは、判断を間違えた。
あのとき躊躇わず、僕を殺していれば良かった。
そうすれば、彼女は生き延びることが出来た。
彼女の実力なら、『終日組』に入ることも夢じゃなかったはずなのに。
たった一度、たったあの一瞬、判断を間違えたが為に。
未来も、命も、人生も、彼女の全てが終わった。
だから、僕は間違わないと決めた。
彼女は間違えた。だから死んだ。
でも僕は間違わない。だから生き延びる。
生き延びる為に、常に正しい判断を下す。
いつだって堅実に、冷静に、最適解を導き出す。
それが、『アメノミコト』親衛隊『終日組』所属。
『玉響』の、生き方だ。
「…行こう」
僕の判断が正しかったのだと、証明する為に。
生き延びる為に。
試験監督が、風魔法の刃で、キエルの首を撥ね飛ばしたのだ。
キエルの生首が、生気を失った目が、虚ろに虚空を眺めていた。
僕はキエルの返り血を全身に浴びながら、ただ呆然としていた。
目の前で起きたことが、信じられなかった。
しかし。
試験監督は、無情だった。
「×××番、戦意なしと判断。反則とみなし、不戦勝として、×××番を勝者とする」
「…」
僕は、勝った。
キエルが負けて、僕が勝った。
キエルから戦意がなくなった時点で、試験監督はキエルを「敗北した」と判断したのだ。
そして、その判断は正しかった。
すんでのところで、感情に流されて人を殺せない暗殺者など、暗殺者と呼ぶこともおこがましい。
こうして、僕はキエルを殺すことなく、勝ち残った。
キエルは勝負に勝ったのに、殺し合いに負けて、死んだ。
そして何故だが、キエルの代わりに、僕が最後の一人になった。
死んだキエルの為に、僕がキエルの分まで生きようと思ったから?
生きることが、キエルに対する罪滅ぼしになると思ったから?
違う。
僕は、己のやるべきことを再確認しただけだ。
考えるべき、決断を下すべきときに、正しい判断をしなければならないのだと。
キエルは、判断を間違えた。
いくら強くても、いざというとき判断を間違える者は、結局弱者だ。
淘汰されるべき人間に成り下がるのだ。
キエルが、そうだったように。
キエルは、判断を間違えた。
あのとき躊躇わず、僕を殺していれば良かった。
そうすれば、彼女は生き延びることが出来た。
彼女の実力なら、『終日組』に入ることも夢じゃなかったはずなのに。
たった一度、たったあの一瞬、判断を間違えたが為に。
未来も、命も、人生も、彼女の全てが終わった。
だから、僕は間違わないと決めた。
彼女は間違えた。だから死んだ。
でも僕は間違わない。だから生き延びる。
生き延びる為に、常に正しい判断を下す。
いつだって堅実に、冷静に、最適解を導き出す。
それが、『アメノミコト』親衛隊『終日組』所属。
『玉響』の、生き方だ。
「…行こう」
僕の判断が正しかったのだと、証明する為に。
生き延びる為に。