神殺しのクロノスタシスⅢ
「…!殺して良いって…」

「聞こえなかった?どうぞ。人質の命なんて、僕にとってはどうでも良いから」

人質を殺して良いと言われることは、予想外だったのか。

『玉響』は、明らかに動揺してみせた。

当たり前だ。

彼の作戦は、僕達が「人質を殺させない」ことを前提にして立てられたものだから。

すると。

「…脅しだと思ってるなら…!」

脅すだけで、実際には殺さないと思われてると判断したのか。

『玉響』は、容赦なく三人目の人質を殺した。

血飛沫が舞い、人質の生徒が倒れた。

しかし。

「気が済んだ?」

「…!」

僕が全く動じていないのを見て、呆然とする『玉響』。

…気の毒だな。

彼は何も間違ってない。

間違った判断は、一切していなかったのに。

すると、そこに。

「あれっ、もう三人逝ってるじゃないですか」

「!?」

教室の扉が、がらりと開いて。

そこから、不死身先生がやって来た。

「!動くな!人質を…」

「殺すんですか?どうぞどうぞご自由に」

「…!?」

僕だけでなく、教師であるはずの不死身先生までもが、人質の命に頓着しない。

これは、明らかに『玉響』の想定外の事態だったことだろう。

「僕はほら、昔から殺人鬼ですからねぇ。生徒が何人殺されようが、どうでも良いんですよ実は。それより、動揺したあなたの心の中を覗く方が、よっぽど楽し、」

「こら、ナジュ君。虐めないの」

不死身先生の後ろから。

学院長シルナ・エインリーと。

「…どうやら、上手く嵌まってくれたようだな」

「全く、危ない綱渡りですよ。こんなことは、二度と御免ですから」

羽久と、イレース先生がやって来た。

「…!?ど、どうなって…」

人質の命に、全く頓着しない教師陣。

『玉響』にとっては、有り得ない事態なんだと思うけど。

実際、これが本物の人質だったとしたら、こんなことは有り得なかった。

でも。

「…ごめんね、ここにいる生徒」

シルナ学院長が、杖を振った。

途端。

「!?」

僕を除いた、教室内の全ての人質…生徒達…が、霧のように消えた。

「実は全部、私の作った分身なんだよ」

そう。

だからこそ、何人殺されても構わないという訳だ。
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