神殺しのクロノスタシスⅢ
「で、でも僕は…。正しい選択をして…間違えたら死ぬって…」

まだ、『アメノミコト』の暗殺者としての生き方が根強く残っている様子。

さて、どう説得したものかと思っていたら…。

「…あー、個人情報だと思って黙ってましたけど」

ナジュが、口を開いた。

こういうときのナジュは、さながら救世主だ。

「良いんですか?こんなところで、命を失って」

「え…?」

「あなたは、あなたの為に死んだお友達の分まで…生きるんじゃなかったんですか?その為に、常に正しい選択をしてきたんでしょう?」

「…!それは…」

…そんな事情があったのか。

ごめんな、知られたくないことを暴いてしまって。

恨むなら、誰彼構わず人の心を読んで憚らないナジュを恨んでくれ。

「だったら、今あなたが取るべき正しい選択は何です?のこのこ国に帰って、殺されることですか?自決することですか?それとも…生きて、償うことですか?」

「…僕は…」

「…あなたのお友達なら、何て言うと思います?」

「…!」

「…本気で大事な相手だったらね、どんな形であれ…生きて欲しいと思うものですよ。これ、経験則なので覚えておくと良いです」

…お前が言うと、説得力が違うな、ナジュ。

そして、その通りだ。

「い、良いんですか…?生きてても…。僕、生きてても良いんですか…?それが正しい選択なんですか…?」

「そうだよ」

シルナは、きっぱりと答えた。

「君はこんなところで死ぬべき人間じゃない。だったら生きるべきだ。生きてさえいれば、どんな道でも歩めるんだから…」
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