神殺しのクロノスタシスⅢ
第一部6章
この場にいる、誰もが。

その、あまりに突然の出来事に、動けなかった。

ナジュは、直前まで『玉響』の心を読んでいた。

だから、気づけなかった。

すぐりの、殺意に。

「…あーあ。残念だなー」

ごろん、と。

『玉響』の生首が、絨毯の上に転がった。

すぐりの黒いワイヤーが、『玉響』の首を胴体から切り離したのだ。

「…君なら、正しい判断を出来ると思ったのになー。君まで『八千代』みたいにこちら側に寝返るなんて、それはないでしょ。馬鹿な子だよねー」

「…すぐり…!お前、何で…!」

全員が立ち上がって、杖を握った。

令月もまた、小太刀を両手に構えた。

「何で?この状況なら、さすがに見たら分かるでしょ。俺は初めから…君達の敵だよ?」

「…!」

…嘘だろ。

「俺まで裏切ったと思った?『八千代』や、そこの馬鹿な『玉響』と同じだと思った?冗談でしょ?俺は自分の役目を忘れてないよ。片時もね」

…まさか、そんな。

そんなはずはない。

「だって…。ナジュが…心を読んだはずだろ。お前がこちら側についたって…」

「あぁ、そこの読心魔法君のこと?」

珍しく。

ナジュもまた、顔面蒼白だった。

ナジュが嘘をついていた?すぐりはこちら側についたのだと?

そんなはずがない。だってナジュは…。

「大丈夫だよ、読心魔法君は裏切ってない。ただ…君達は過信し過ぎたんだよ。読心魔法という魔法をね」
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