神殺しのクロノスタシスⅢ
「いや待って。ツキナ、違う。俺そういう意味で言ったんじゃ、」

「園芸部の花壇もね、使ってないところもらったの!結構広いから、お花だけじゃなくてお野菜も育てられるよ!頑張ろうね!」

「いやいやいや、野菜じゃない。野菜じゃなくて」

違う。俺の言いたいことが全く伝わってない。

ちょっと軌道修正しないと、全然違う方向に話が、

「えっ、すぐり君、お野菜嫌いなの?」

「は?」

誰が今、野菜の話した?

「駄目だよ~お野菜はちゃんと食べなきゃ!でも大丈夫!自分達で作った野菜なら、きっと美味しく食べられるよ!頑張って一緒に作ろうね!」

「いや、あの、そうじゃなくて、俺がツキナを好きだって話をね?」

「?私もすぐり君のこと大好きだよ?」

う、うん。

でもそうじゃなくてね?

「罰掃除も終わったし、明日から園芸部の活動頑張ろうね!何のお野菜植えよっか?きゅうり?ナス?トマト?とうもろこしも良いよね!」

「…」

「すぐり君は何のお野菜が好き?」

「…大根、かな」

「大根!美味しいよね!じゃあ大根を植えよう!ふろふき大根にしようか。それともサラダにしようかな?」

…一世一代の、告白が。

何故か、大根の話にすり替えられた。

こんなことってある?

早速、神様から天罰を与えられた気分だなぁ~…。

「…はー…」

深々と、溜め息をつく。

緊張していた自分が、馬鹿みたいだよー…。

…まぁ、でも。

「苗買ってこようね!それと、お花の種も!あとは肥料と農薬と…。やることいっぱいだね!」

「…仕方ないなー」

明日からも、一緒にいられるのなら。

俺が、俺みたいな人間が。

明日に、希望を持って生きて良いのなら。

大根でも何でも、喜んで育てるよ。
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