神殺しのクロノスタシスⅢ
お前が殺したんじゃないか、って。

お前が殺した癖に、お前はのうのうと生き残って、改心して裏切って。

その癖、恥知らずにもお前が埋葬するのかよ、って。

そう言われるだろうね。

『玉響』は、きっと思ってるだろうなー。

お前にだけは、看取って欲しくねぇよ、って。

「…ごめん」

本当にごめん。

そんな言葉で、許されるなんて思ってない。

今まで俺が殺した人全部。

そんな簡単な言葉で、許されるなんて思ってない。

一生をかけて、いや…一生をかけても、許されない罪だろう。

これから先、誰を救おうと、誰を助けようと、世界を救ったって、許されない。

…許されないことを、したんだから。

本当に償いたいと思ってるなら、今すぐここで腹を切って。

あの世で、俺が来るのを手ぐすね引いて待っている人々に、土下座して謝れ、と。

そう言われるかもしれない。

だけど、それは償いじゃない。

思考停止して、死を選び、楽になるのならば。

それは俺にとって償いじゃない。ただの救いだ。

だから、俺は生きる。

『八千代』もそうだ。

自分の殺した人の為に生きる。

自分の犯した罪と共に生きる。

生きることが、何よりの贖罪になると信じて。

故に。

俺は恥知らずにも、『玉響』の遺骨を腕に抱く。

「…ごめん」

せめて。

彼の本名だけでも、知りたかった。

「…僕の名前は、黒月令月」

『八千代』は、『玉響』に向かってそう言った。

「…俺の名前は、花曇すぐり」

俺もまた、彼に名乗った。

言ったことなかったもんな。

「…今度、会ったらさ」

「次、また会うことが出来たら」


















「…君の名前を、教えてくれないかな」




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