神殺しのクロノスタシスⅢ
「んー…」

全身に、異常がないかを確かめる。

すぐりさんに、こっぴどく身体を粉微塵にされてから四日目。

身体の修復は、その日のうちに済ませてもらったものの。

内臓の方はズタボロであった。

というのも、あの少年の使う毒。

あれが予想以上に効いた。

まぁ、とはいえ、僕不死身だから?

いかな毒と言えど、死ぬほど痛い思いをするだけで、死にはしないのだが。

それなのに、こうして医務室のベッドにくくりつけられて(比喩)、もう四日目になる。

今日こそは、解放されて良いだろう。

「おはよう、ナジュさん」

「あ、おはようございます天音さん」

僕は、出来るだけ軽快に答えた。

「身体の具合はどう?」

朝一番に、いつもこう聞かれる。

そして僕は、いつもこう答える。

「えぇ、もう大丈夫ですよ」

「そっか。じゃ、今日も大人しくしてようね」

何故そうなる。

大丈夫だって言ったのに、何故そうなる。

会話が噛み合わないタイプの人?

「…あのですね、昨日も言いましたけど」

「何?」

「僕は不死身の身体であって、毒だろうと粉微塵にされようと、再生するんですから。こんなに大事に扱ってもらわなくても良いんですよ」

酷使してもらっても良いくらい。

酷使…されるのは嫌だけどさ。

学院の生徒や、他の不死身じゃない一般人のように、丁重に扱われる必要はない。

「それは昨日も聞いたよ」

「…まぁ、僕昨日も言いましたね」

記憶にありますよ。

「で、僕が何て答えたか覚えてる?」

「…『毒が身体に残ってる状態で、無理はしちゃいけないよ。身体を再生するのに魔力だって使ってるんだから。まだ大人しくしてなきゃ駄目』」

「一言一句覚えてるんだね」

「一言一句あなたの心をそのまま読みましたからね」

「じゃ、そういうことだから」

…。

…酷いと思いません?

そりゃ確かに、未だに身体はちょっとダルいし(多分毒の影響)。

更に、身体の節々が痛むし。

時折、内臓の節々も痛むけど。

普通に生活するぶんには、全然問題ないレベルに回復している。

天音さんがかけてくれた回復魔法によって、解毒もほぼ終わっている。

あとは放っておけば、いずれ身体が勝手に修復してくれる。

だから、ベッドで安静にしている必要はないのだ。

もう、二日前くらいから同じやり取りをしている。

それなのに。

未だに、天音医師の許可が降りない。

過保護にも程があると言うものだ。

< 174 / 822 >

この作品をシェア

pagetop