神殺しのクロノスタシスⅢ
「…君が、あまり戦いを好まないことは知ってる」

「…」

シルナは、静かにそう言った。

「学院に来たら、多分嫌でも戦火に巻き込まれることになる。君には主に、生徒を守る役割を果たしてもらうつもりだから、前線には出さない。…だけど、それはあくまで『そのつもり』ってだけで、状況によると思う」

実際どうなるかは、まだ分からない。

『アメノミコト』がどう出てくるか。

また前みたいに、徒党を組んで攻めてくるのか。

それとも今度は、少数精鋭で忍び込んでくるのか…。

いずれにしても、令月を巡って、また血が流されるであろうことは、ほぼ確定だ。

血を見ることを嫌い、戦いを疎んでいる天音にとっては、辛いことを強いている。

それは、俺もシルナも分かってる。

だけど…。

…それ以上に、俺達は令月を…生徒達を守りたい。

「君にこんなことを頼むのは筋違いだって分かってる。『アメノミコト』に喧嘩を売ったのは私であって、これは私が背負うべき問題だ」

おい。この、馬鹿シルナ。

また、一人で自分の責任だと思い込んでやがる。

「そこに君を巻き込んでしまうのは、不本意だし、不甲斐ない。だけど…協力してくれないかな」

「…学院長…」

「…どうしても気が進まないなら、断ってくれても良いんだよ。シュニィちゃんに頼んで、別の人員を…」

「良いですよ。分かりました」

天音は、あっさりと。

夕飯のメニューでも決めるかのように、頷いた。

「…良いの?」

これには、頼んだ張本人のシルナもびっくり。

「はい。学院長には恩がありますし。聖魔騎士団に入ったときから、戦う覚悟は出来てます」

きっぱりと、天音はそう言った。

「それに…。学院に匿ってもらってた頃、恥ずかしながら教室で、生徒の前で取り乱してしまったこともあったし…。そのお詫びも兼ねて」

…あぁ。

あったね、そんなこと。

あれは仕方ない。仇と思ってた人間が、いきなり目の前に現れたのだから。

そりゃ取り乱しもする。気にするな。

「良かった。天音君が来てくれたら、百人力…」

「仇と同僚になっても良いんですか?」

「!?」

不意に。

ずっと黙っていたナジュが、口を開いた。


< 18 / 822 >

この作品をシェア

pagetop