神殺しのクロノスタシスⅢ
そうだ、この違和感だ。
ちゃんと心を覗いてるのに、何処か、何かを隠されているような感覚。
見せても良い部分だけを見せて、本当に大事なことには蓋をされている感覚。
全部が見えてる訳じゃない。
表面だけを見せられて、その裏側が見えない。
巧妙に隠されている。
でも、その蓋は完璧なものじゃない。
当たり前だ。
羽久さんのように、たくさんの人格に分かれているのでもない限り。
自分の本心を、完全になかったことにするのは不可能だ。
あくまで、蓋をして隠しているに過ぎない。
だから僕がすべきなのは、その蓋を外すこと。
そしてその蓋に、鍵はかかってない。
開けようと思えば、開けられる。
開けろ。
蓋を開けろ。仮面を剥がせ。
「…ふぅ…」
それはまるで、深淵から一本の糸を探るような作業だった。
深く覗き込む。もっと、もっと深くに。
こんな浅いところじゃない。もっと奥を見るのだ。
すぐりさんは集中していると言ったが、僕も集中していた。
すぐりさん以上に集中していた。
そして。
深く深く潜り込んで、心の蓋に触れようとした…、
そのとき。
「…はーい、もう終わり」
いきなり、現実に引き戻された。
「はっ…はぁ…はぁ…」
張り詰めていた緊張と集中の糸が途切れて、僕は思わず、壁に手をついた。
…危なかった。
「あんまり無理すると、戻れなくなるよ」
「…そう…みたいですね…」
危うく。
訓練初日にして、医務室送りになるところだった。
「続きは明日にしようよ。俺もあの状態、そう長くは続けられないし」
「…分かりました」
僕は、ちらりと時計を見た。
僕がすぐりさんの心を覗いていたのは、精々一分と少し。
たったそれだけの時間しか、集中力が持たなかった。
…超雑魚じゃん。僕。
すぐりさんがあの状態を維持出来るのは、最長五分。
対する僕は、たった一分ほどしか深淵を覗けず。
大体、仮面をひっぺがすことさえ出来ていないのだ。
先は、まだ長そうだ。
ちゃんと心を覗いてるのに、何処か、何かを隠されているような感覚。
見せても良い部分だけを見せて、本当に大事なことには蓋をされている感覚。
全部が見えてる訳じゃない。
表面だけを見せられて、その裏側が見えない。
巧妙に隠されている。
でも、その蓋は完璧なものじゃない。
当たり前だ。
羽久さんのように、たくさんの人格に分かれているのでもない限り。
自分の本心を、完全になかったことにするのは不可能だ。
あくまで、蓋をして隠しているに過ぎない。
だから僕がすべきなのは、その蓋を外すこと。
そしてその蓋に、鍵はかかってない。
開けようと思えば、開けられる。
開けろ。
蓋を開けろ。仮面を剥がせ。
「…ふぅ…」
それはまるで、深淵から一本の糸を探るような作業だった。
深く覗き込む。もっと、もっと深くに。
こんな浅いところじゃない。もっと奥を見るのだ。
すぐりさんは集中していると言ったが、僕も集中していた。
すぐりさん以上に集中していた。
そして。
深く深く潜り込んで、心の蓋に触れようとした…、
そのとき。
「…はーい、もう終わり」
いきなり、現実に引き戻された。
「はっ…はぁ…はぁ…」
張り詰めていた緊張と集中の糸が途切れて、僕は思わず、壁に手をついた。
…危なかった。
「あんまり無理すると、戻れなくなるよ」
「…そう…みたいですね…」
危うく。
訓練初日にして、医務室送りになるところだった。
「続きは明日にしようよ。俺もあの状態、そう長くは続けられないし」
「…分かりました」
僕は、ちらりと時計を見た。
僕がすぐりさんの心を覗いていたのは、精々一分と少し。
たったそれだけの時間しか、集中力が持たなかった。
…超雑魚じゃん。僕。
すぐりさんがあの状態を維持出来るのは、最長五分。
対する僕は、たった一分ほどしか深淵を覗けず。
大体、仮面をひっぺがすことさえ出来ていないのだ。
先は、まだ長そうだ。