神殺しのクロノスタシスⅢ
「こんにちは、園芸部のお二人様」
「あ、ナジュ先生こんにちはー」
僕が園芸部の畑を訪ねると。
ツキナ・クロストレイが迎えてくれた。
いつ会っても笑顔だな、この子は。
聞くところによると、音魔法が得意らしいよ。
すぐりさんの心の中を読んだとき知った。
…まぁ。
相変わらず僕は、彼が心に被せた仮面を、剥がせていないのだが。
「今日は何をしてるんですか?」
「水やりです!」
右手にじょうろ、左手にもじょうろを持ったツキナさんが、笑顔で答えた。
両手にじょうろ持ってるんだから、何をしてるのかなんて、尋ねるまでもなく分かるだろうに。
ちゃんと面倒臭がらずに、素直に答えてくれる。
すぐりさんは、こういう無邪気な子がタイプなんだな。
自分は邪気にまみれてるから、無意識に無邪気なタイプを選んでしまうのかもしれない。
そういえば、僕もそうだな。
あれ?もしかして僕達、同類…?
いや、僕は年上派だから。
「きゅうりは水を絶やしちゃ駄目なんですよー。お水たくさんどうぞー」
とか言いながら、きゅうりの苗に水をやるツキナさん。
知ってる?
きゅうりって、世界一栄養のない野菜らしいよ。
なんて、言ったらツキナさんが泣き出しかねないので、言わない。
だってツキナさんを泣かせたら、僕がすぐりさんに酷い目に遭わされるよ。
さすがに、二度も毒入りミンチになるのは御免だからな。
それで。
今日の「対価」を、ちゃんと収穫しておかないとな。
「一つ聞いて良いですか?」
「何ですか?」
「ツキナさんの、好きな男性のタイプは?」
ちなみに。
これらの質問は、僕が考えているのではない。
毎日、すぐりさんから「明日はこれこれこういうことを聞いてくれ」とリクエストが来る。
僕は、その通り聞いているに過ぎない。
つまり、何が言いたいのかというと。
下心の塊なのはすぐりさんであって、僕ではない。
「えー?うーん。そうだなぁ~」
じょうろを両手に、考えるツキナさん。
僕のみならず。
すぐりさんも、ピタリと動きを止めて、ツキナさんの返答に聞き耳を立てていた。
下心の塊で生きてるな、あの人。
「ううん、えぇ~っと…」
「難しいですか?」
「うーん、白馬に乗って迎えに来てくれる王子様が好きです!」
…すぐりさんが。
ガクンと地面に膝をついて、絶句していらっしゃった。
あらお気の毒。
残念ながら、これが彼女の本心みたいですよ。
「今時、白馬に乗って迎えに来てくれる王子様はいるんですかね?」
「えへへ。でもそんな人が好きです!」
「へぇ~」
あー、良かった。
リリスが、「白馬に乗った王子様が好き!」なんて言わなくて。
危うく、乗馬の練習から始めなきゃならないところだったよ。
「あ、ナジュ先生こんにちはー」
僕が園芸部の畑を訪ねると。
ツキナ・クロストレイが迎えてくれた。
いつ会っても笑顔だな、この子は。
聞くところによると、音魔法が得意らしいよ。
すぐりさんの心の中を読んだとき知った。
…まぁ。
相変わらず僕は、彼が心に被せた仮面を、剥がせていないのだが。
「今日は何をしてるんですか?」
「水やりです!」
右手にじょうろ、左手にもじょうろを持ったツキナさんが、笑顔で答えた。
両手にじょうろ持ってるんだから、何をしてるのかなんて、尋ねるまでもなく分かるだろうに。
ちゃんと面倒臭がらずに、素直に答えてくれる。
すぐりさんは、こういう無邪気な子がタイプなんだな。
自分は邪気にまみれてるから、無意識に無邪気なタイプを選んでしまうのかもしれない。
そういえば、僕もそうだな。
あれ?もしかして僕達、同類…?
いや、僕は年上派だから。
「きゅうりは水を絶やしちゃ駄目なんですよー。お水たくさんどうぞー」
とか言いながら、きゅうりの苗に水をやるツキナさん。
知ってる?
きゅうりって、世界一栄養のない野菜らしいよ。
なんて、言ったらツキナさんが泣き出しかねないので、言わない。
だってツキナさんを泣かせたら、僕がすぐりさんに酷い目に遭わされるよ。
さすがに、二度も毒入りミンチになるのは御免だからな。
それで。
今日の「対価」を、ちゃんと収穫しておかないとな。
「一つ聞いて良いですか?」
「何ですか?」
「ツキナさんの、好きな男性のタイプは?」
ちなみに。
これらの質問は、僕が考えているのではない。
毎日、すぐりさんから「明日はこれこれこういうことを聞いてくれ」とリクエストが来る。
僕は、その通り聞いているに過ぎない。
つまり、何が言いたいのかというと。
下心の塊なのはすぐりさんであって、僕ではない。
「えー?うーん。そうだなぁ~」
じょうろを両手に、考えるツキナさん。
僕のみならず。
すぐりさんも、ピタリと動きを止めて、ツキナさんの返答に聞き耳を立てていた。
下心の塊で生きてるな、あの人。
「ううん、えぇ~っと…」
「難しいですか?」
「うーん、白馬に乗って迎えに来てくれる王子様が好きです!」
…すぐりさんが。
ガクンと地面に膝をついて、絶句していらっしゃった。
あらお気の毒。
残念ながら、これが彼女の本心みたいですよ。
「今時、白馬に乗って迎えに来てくれる王子様はいるんですかね?」
「えへへ。でもそんな人が好きです!」
「へぇ~」
あー、良かった。
リリスが、「白馬に乗った王子様が好き!」なんて言わなくて。
危うく、乗馬の練習から始めなきゃならないところだったよ。