神殺しのクロノスタシスⅢ
そして、その日の密会。

「…有り得る?今時、白馬の王子様」

「幼稚園児でもいませんよ。『白馬の王子様が好き!』なんて女子」

「あぁ~。もう、俺、何であんな難しい子を好きになったんだろうなぁ~」

本当にね。

同情しますよ。

良かった。僕の恋人がリリスで。

あの子は良いよ。

僕が大量殺戮犯だろうと、陰湿な読心魔法の使い手だろうと、変わらず好きでいてくれる。

あー僕の恋人万歳。

「しかも、あれって本心なんでしょ?」

「本心でしたね。もう、心から本心でした」

「何だよ白馬の王子様って…。俺王子じゃないし!馬乗れないし!」

心配しなくても、大半の人はそうだと思いますよ。

「百歩譲って、練習すれば馬には乗れるけどさ~…」

百歩譲って、乗馬の練習をする気はあるんだ。

「俺、どうやって王子になれば良いの!?」

「…」

せめて、チャンスがあるとすれば。

今すぐ自殺して、王子になることを期待して来世ガチャに賭ける。

それくらいしかチャンスがない。

「まぁ良いじゃないですか。白馬の王子様が良い~とか言いながら、内心『金持ちでイケメンで、何でも言うこと聞いてくれる奴隷みたいな男が良い』とか思ってる訳じゃないんだから」

「…そりゃまー、そうだけどさ…」

良くも悪くも、あの『白馬の王子様が~』は、彼女の本心なのだ。

厄介ではあるけど、悪どい女ではない。

それが証明されただけでもマシ…。

…。

…いや、でも白馬の王子様はないわ。

「はぁ、白馬の王子様か…」

「…すぐりさん。白馬の王子様論争は良いとして」

「良くないよ~!何が良いの?その理論で行くと、俺がツキナの恋人になれる可能性、完全に潰えてるじゃん!」

それは本当に気の毒だとは思うけど。

聞いたのは君だから。

それより。

「今日の訓練に付き合ってください。約束でしょう?」

「あー、うん…。はいはいそーでしたね。ちょっと待ってよ…」

くるりと後ろを向いて、すぐりさんは心に仮面をつける準備を始めた。
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