神殺しのクロノスタシスⅢ
毎日土まみれになって、精が出ますね。

そう言う僕も、毎日汗まみれになりながら特訓してますけどね。

それにしても、今日はまた一段と土まみれだ。

両手のゴム手袋も、園芸用の長靴も、何ならほっぺたにまで泥がついている。

君、魔導師じゃなくて、百姓目指したら?

「今日は何をしてるんですか?」

「今日はですねー、えへへ。なんと!」

なんと?

「さつまいもを植えてます!」

あー、はいはい。

成程ね。もうそんな時期?

「さつまいもは良いですよ~!煮ても良し!焼いても良し!揚げても良し!お菓子にしても良し!超万能野菜なんです!」

まぁ、家庭菜園の定番ではあるよね。

小学生のとき、遠足でそんなのなかった?

芋掘り体験、みたいなの。

僕はなかった。

「収穫したら、何を作る予定なんですか?」

「そうだな~、うーん。何が良いかなぁ?すぐり君何が食べたい?」

「え~?うーん…。…ツキナと一緒に食べられるなら、何でも良いよ」

はいはい惚気ありがとうございましたー。

「そう?じゃあ、いっぱい出来たら、スイートポテト作ろっか!」

華麗にスルーされてますけどね。

「ナジュ先生にも分けてあげますね!」

「ありがとうございます。でも甘いものなら、学院長に持っていった方が喜びますよ」

最近、訓練に忙しくて学院長の顔ほとんど見てないけど。

元気にしてるかなぁ、あの人。

分身とはよく会うので、生きてはいるだろう。多分。

「あっ、そっか!学院長先生、甘いもの大好きですもんね!」

大好きどころか。

生徒が手ずから作った材料で、手作りのスイートポテトなんて持ってきてもらったら。

あの人きっと、狂喜乱舞して大騒ぎするよ。

平和だな~…。

「頑張って育てようね!すぐり君!」

「そーだね」

楽しそうで何より。

…で。

僕は、スイートポテトの話をしに来た訳ではない。

芋はどうでも良い。

それより、今日の「対価」を支払わなくては。

「…ところで、ツキナさん」

「はい!何ですか?」

「もしツキナさんに彼氏がいたら、一緒にどんなところにデートに行きたいですか?」

質問が。

どんどん下心満載になっていってるけども。

それはあくまで「すぐりさんの」リクエストに応えてるだけであって、僕の趣味じゃないからあしからず。
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