神殺しのクロノスタシスⅢ
──────…その日の、放課後。

…しばらくは、学生寮の自分の部屋で、大人しくしていたのだけど。

勉強したり、でも力魔法以外は相変わらず分からないから、勉強は断念して。

じゃあ身体を動かそうと、かれこれもう一時間くらいストレッチしているのだけど。

…落ち着かない。

やっぱり…。

「…ユイト君」

「うん?」

ひたすら腕立て伏せをしていた僕は、むくっと起き上がった。

良い感じに、筋肉もほぐれた。

「ちょっと出掛けてくる」

「出掛け…え?」

「校舎に行ってくる」

やっぱり、一人だけじっとしてなんていられない。

「校舎にって…。何か忘れ物でもしたのか?」

「忘れ物…じゃないけど…。忘れ物みたいなもの」

「でも、もう下校時刻過ぎてるから、施錠されてると思うよ」

そうだろうね。

だけど、そんなことは関係ない。

「大丈夫。何とかするから」

「何とかって…」

「朝までには帰るよ」

「あっ、令月…」

そう言い残して、僕はユイト君の制止も聞かず、学生寮を出た。

姿を見られたら困るので、こっそりと、である。

外はもう暗くなり始めていて、身を隠して移動するには申し分ない。

校舎に向かうと、確かに鍵が掛かっていた。

が、あくまで普通の鍵だ。

正しいパスコードを入れなければ爆発する、とかいう面倒な鍵ではない。

ヘアピンを使って、鍵穴を探ること三秒。

カチリ、と音がして、鍵が開いた。

うん。

イーニシュフェルト魔導学院の警備、甘過ぎ。

でも、お陰で侵入するのは楽だ。

校舎内に侵入した僕は、真っ直ぐに学院長室を目指した。

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