神殺しのクロノスタシスⅢ
「…ナジュ君はね」
リリスは、静かな怒りを込めて言った。
「物凄く気にしてた。読心魔法対策をされてたのは仕方ないことなのに、あなた達に、信頼してたあなた達に、ただの一瞬でも役立たずだと思われたことをずっと気にしてた。あなた達の信頼を失ったって…」
…そんな。
何でそんなことを…俺達は、そんなつもり全く…。
「それを挽回する為に、心の仮面を破る訓練をして…。そこまでなら、まだ良かった。それだって私は止めたかったけど…」
「…」
「読心魔法はね、あなた達が思ってるよりずっと、危険な魔法なの。他人の精神を侵す代わりに、自分の精神も侵してる。だから私は止めた。…同時に複数人の読心をする、なんて」
…!
なん、だって?
同時に複数人の読心?
そんなことが出来たのか?いや…そんなことを、やろうとしていたのか?
「以前試したときも、頭がパンクしかけて…。あまりにも危ないから、私がリミッターをかけてたのに、ナジュ君はあなた達の信頼を取り戻したいからって、無理矢理そのリミッターを外してしまった…」
…って、まさか。
最近、しばらくナジュの姿が見えなかったのは…。
その、読心魔法の訓練の為に…?
俺達は、ナジュがそんなに危険なことをしているとも知らず。
ナジュの姿が見えないのは気づいていたのに、何をしていたのか聞きもせず…。
「ナジュ君なら、放っておいても良いと思ってた?どうせ不死身なんだから大丈夫だって思った?」
「…」
痛いところを突かれた。
それは…思っていた。
認めざるを得ない。
ナジュなら、何かあったとしても不死身なんだから、またけろっとして戻ってくるものと…。
「私がいくら止めても、聞いてくれなかった。当たり前だよね。ナジュ君は私じゃなくて、あなた達の信頼を取り戻したくて頑張ってたんだもの。あなた達の言葉じゃなきゃ、届かなかった」
「…」
「その結果がこれよ。ナジュ君はリミッターを外して、同時に十人の読心を可能にした。自分の限界を越えて…」
「じゅっ…」
十人、だって?
一人の読心しか出来なかったはずのナジュが、この短期間で十人?
一体どんな過酷な訓練をしたら、そんなことが出来るようになるのだ。
「だから、ナジュ君は壊れちゃった。読心魔法の制御が効かなくなって…。だから…だからやめようって言ったのに。ナジュ君がここまでするのに、どれだけ頑張ったと思ってるの?どれだけ、血を吐くような努力をして…それなのに、あなた達はそんなことも知らずに…」
リリスは、シルナから手を離し。
自分の…愛する人の瞳から零れ落ちる涙を拭った。
「身体は不死身でも、精神はこんなに…脆くて、簡単に壊れちゃうのに…」
「…」
「…返してよ」
リリスは、泣きじゃくりながら言った。
「私達は、ずっと一人ぼっちだったの。あなた達は、ナジュ君がいなくても平気なのかもしれないけど。私には、ナジュ君が必要なの。返して。読心魔法なんて使えなくて良い。あなた達にとって、何の役にも立たなくて良い。返して。私の大好きなナジュ君を返してよ!!」
リリスの、悲痛な叫びに。
答えられる者は、誰もいなかった。
リリスは、静かな怒りを込めて言った。
「物凄く気にしてた。読心魔法対策をされてたのは仕方ないことなのに、あなた達に、信頼してたあなた達に、ただの一瞬でも役立たずだと思われたことをずっと気にしてた。あなた達の信頼を失ったって…」
…そんな。
何でそんなことを…俺達は、そんなつもり全く…。
「それを挽回する為に、心の仮面を破る訓練をして…。そこまでなら、まだ良かった。それだって私は止めたかったけど…」
「…」
「読心魔法はね、あなた達が思ってるよりずっと、危険な魔法なの。他人の精神を侵す代わりに、自分の精神も侵してる。だから私は止めた。…同時に複数人の読心をする、なんて」
…!
なん、だって?
同時に複数人の読心?
そんなことが出来たのか?いや…そんなことを、やろうとしていたのか?
「以前試したときも、頭がパンクしかけて…。あまりにも危ないから、私がリミッターをかけてたのに、ナジュ君はあなた達の信頼を取り戻したいからって、無理矢理そのリミッターを外してしまった…」
…って、まさか。
最近、しばらくナジュの姿が見えなかったのは…。
その、読心魔法の訓練の為に…?
俺達は、ナジュがそんなに危険なことをしているとも知らず。
ナジュの姿が見えないのは気づいていたのに、何をしていたのか聞きもせず…。
「ナジュ君なら、放っておいても良いと思ってた?どうせ不死身なんだから大丈夫だって思った?」
「…」
痛いところを突かれた。
それは…思っていた。
認めざるを得ない。
ナジュなら、何かあったとしても不死身なんだから、またけろっとして戻ってくるものと…。
「私がいくら止めても、聞いてくれなかった。当たり前だよね。ナジュ君は私じゃなくて、あなた達の信頼を取り戻したくて頑張ってたんだもの。あなた達の言葉じゃなきゃ、届かなかった」
「…」
「その結果がこれよ。ナジュ君はリミッターを外して、同時に十人の読心を可能にした。自分の限界を越えて…」
「じゅっ…」
十人、だって?
一人の読心しか出来なかったはずのナジュが、この短期間で十人?
一体どんな過酷な訓練をしたら、そんなことが出来るようになるのだ。
「だから、ナジュ君は壊れちゃった。読心魔法の制御が効かなくなって…。だから…だからやめようって言ったのに。ナジュ君がここまでするのに、どれだけ頑張ったと思ってるの?どれだけ、血を吐くような努力をして…それなのに、あなた達はそんなことも知らずに…」
リリスは、シルナから手を離し。
自分の…愛する人の瞳から零れ落ちる涙を拭った。
「身体は不死身でも、精神はこんなに…脆くて、簡単に壊れちゃうのに…」
「…」
「…返してよ」
リリスは、泣きじゃくりながら言った。
「私達は、ずっと一人ぼっちだったの。あなた達は、ナジュ君がいなくても平気なのかもしれないけど。私には、ナジュ君が必要なの。返して。読心魔法なんて使えなくて良い。あなた達にとって、何の役にも立たなくて良い。返して。私の大好きなナジュ君を返してよ!!」
リリスの、悲痛な叫びに。
答えられる者は、誰もいなかった。