神殺しのクロノスタシスⅢ
どうも皆さん、こんにちは。

ルーチェス・ナジュ・アンブローシアです。

その日、一時間目の授業で、覚えたての読心魔法を実践してみたものの。

調子に乗って十人くらい読んでたら、魔法が暴走し。

なんとその場にいた全員の心を読んでしまって、脳内キャパオーバー。

みっともなくわーわー騒いだ結果、学院長に気絶させられ、強制シャットダウン。

何だか深い深淵の底に引き摺り込まれるような、そんな錯覚を覚えながら意識を失い。

あーもう人生終わったのかもー。あれ?僕の悲願叶った?
 
いや待て、これじゃ僕だけが終わって、リリスには会えないじゃん。

ヤバいまだ死ねない、でも死にそう、うわーどうなるんだろう僕の運命。  

等々、色々なことを考えながら意識が薄れていって。
 
もう一生目覚めないのかなと思って。

そのまま、深い眠りに落ちていった…。





…のだが。

…誰かが、啜り泣く声で我に返った。
 
あれ、誰かが泣いてる。

何だろう、聞き覚えのある声…。

でも何だか僕、凄く疲れてしまったし。

ずっと死ぬことが夢だったんだし、もうこのまま、一生眠ってても良いんじゃないかな。

…ん?いや待て。

この声、何だか聞き覚えがある…?

あ、そうだこの声は。

何故忘れていたんだ、僕の安っぽい命よりずっと大切な人の声。

その声の持ち主が泣いてる。起きなきゃ。寝てる場合じゃない。アホか。起きろ!と。

自分を叱咤して、目を覚ますと。
 
そこは、僕の頭の中。

僕が唯一、愛する人と言葉を交わせる世界。

僕の精神世界だった。

…いや、精神世界で覚醒したからって、それは目が覚めたと言えるのか?

まぁ、そこは置いといて。

気がつくと、僕の目の前に、その人がいた。  

「リリス…」

紛うことなき。

僕の愛する人、その人であった。

「ナジュ君…」

リリスは、涙声で僕の名を呼んだ。
 
そうだ。

僕、そんな名前の人間だったなぁ。そういえば。

僕はリリスに膝枕された状態で、横になっていた。
 
…リリスは、泣いているけれども。

状況は、僕としては最高である。   

だって、好きな女の子に膝枕されてるんだよ?

すぐりさんだったら、吐血してるよきっと。

…ん?すぐりさん…。
 
誰だったっけ。

とにかく、今は目の前のリリスだ。

「おはようございます…」

「うぅ…。ナジュ君…」

僕が、丁寧に目覚めのご挨拶をすると。

リリスは、その大きな瞳を、更に大きく開き。  

大きな涙の粒をたくさん溢しながら、僕の顔に突っ伏して泣きじゃくった。
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