神殺しのクロノスタシスⅢ
「うわぁぁぁん、ナジュ君、ナジュ君。ナジュ君の馬鹿。馬鹿馬鹿馬鹿!」

起き抜けに、馬鹿を連呼されました。

これだけ馬鹿馬鹿言われるってことは、僕は馬鹿なんだろう。きっと。
 
どうも。馬鹿のナジュです。
 
「起きないかと思った。もう起きないかと…!」

「あ、はい…。えっと、済みません…」

「済みませんじゃ済まないもん!馬鹿馬鹿馬鹿」

済みません。

僕はどうしたら良いんだろう。

「えぇと…リリス…。僕、何やってたんでしたっけ…」

「ナジュ君…。覚えてないの?」

「…」

…何してたんだっけな?
 
起き抜けに精神世界で、しかもリリスにこれだけ馬鹿と罵られるってことは。

きっと、僕は大変馬鹿なことをしてしまったのだろう。

何だか記憶が曖昧で…。よく思い出せないのだが。
 
僕、何してたんだっけ?

「…思い出せないの?」

「…」

「…私のことも?」

とんでもない。

「あなたはリリスですよ」

リリスのことを忘れたら、もう僕なんて生きてる意味ないよ。
 
愛する人の名前を忘れるなんて、人生終わりだ。

「良かった…」

自分のことは忘れられてないのだと、安堵するリリス。

「じゃあ…自分のことは分かる?」
 
「自分の?えっと…。ナジュですよね。ルーチェス・ナジュ・アンブローシア」

「うん、そう…。そうだよ、君はナジュ君だよ」

ですよね。

良かったー、自分の名前も思い出せない記憶喪失とか、洒落にならないもん。

しかし。

問題は、そこからだった。

「イーニシュフェルト魔導学院のことは?学院長や…他の先生達や…生徒達のことは?」

「…」

「…『カタストロフィ』にいたときのことは?」

「…」

「読心魔法を使って…。無理をして倒れちゃったことは?覚えてないの?」

「…はぁ…」

…えぇっと。

「…ごめんなさい、リリス」

何て言ったら良いのか、いまいち分からないけど…。

「…僕…」
< 248 / 822 >

この作品をシェア

pagetop