神殺しのクロノスタシスⅢ
――――――…リリスとの「初対面」から、数日。
放課後、俺とシルナ、イレース、令月の四人で、医務室に向かった。
何をしに行ったかなど、言うまでもない。
未だ目を覚まさない、同僚を見舞う為だ。
「…天音」
「皆さん…」
ナジュの眠るベッドの傍らに、天音が座っていた。
浮かない顔だった。
「…相変わらずか?」
「…そうだね」
…そうか。
期待していた訳じゃない。もし俺達がいない間に目を覚ましていれば。
すぐにでも、天音が知らせてくれるだろうから。
その知らせがないってことは、状況に変わりはないということだ。
「ナジュ…」
ナジュの瞳は、固く閉じられたままで。
もう一生、開くことはないのではないかとさえ思えた。
馬鹿言え。
こいつには、言ってやらないといけないことが山程あるのだ。
目を覚ましてもらわなければ困る…。
「全く…とんでもない寝穢さです。困ったものですね」
と、嘆息するイレース。
本当にな。
寝坊にも程があるぞ、ナジュ。
「ナジュ君、これナジュ君のおやつ」
シルナは、持参した見舞いの品…チョコバームクーヘン…を、ナジュの傍に置いた。
「これ美味しいよ〜。これ。早く起きないと腐っちゃうよ〜…」
「…」
チョコバームクーヘンに釣られて起きるのは、お前くらいだ。
更に。
「よいしょ」
「令月…何やってんだ」
「お見舞い」
それがお見舞いか。
令月は、あろうことか、不気味な般若とインディアンを足して2で割ったようなお面を、ナジュの傍に立て掛けていた。
さっきからそのお面持ってて、一体何を持ってるのかと思ったら。
まさか、それがお見舞いの品とは。
「不気味過ぎるだろ…」
「でもこれ、ジャマ王国ではよく病人に送られる見舞い品だよ」
何だと?
見舞い品って言ったら、普通花束とか果物とか…。
鉢植えは縁起が悪いから、渡さない方が良いらしい。
で、ジャマ王国では何が常識だって?
「身体の中の病原体が、このお面を怖がって、その人の身体の中から逃げちゃうようにって、おまじない」
「…成程」
ちょっと納得してしまった自分がいる。
でも、俺はやっぱり嫌だな。
俺が倒れるときがあったら、そのときは花束を頼む。
仮にこのお面に効果があったとして、目が覚めたときこのお面が目の前にあったら、逆に具合悪くなりそう。
…それで。
「天音。…リリスは?」
「…」
天音は、無言で首を横に振った。
ナジュが駄目なら、せめてリリスを通して、ナジュの様子を知れたらと思ったのだが。
残念ながら、それも叶わないらしい。
「何度も呼びかけてはいる。けど…」
…応答はなし、か。
リリスとも、あれっきりだ。
一度出てきて、俺達を罵って、それ以来ナジュの身体を借りて、姿を現すことはなかった。
それもそのはず。
リリスは、俺達のことを完全に、敵認定していた。
ナジュをこんな風にした、張本人達だと。
実際、その通りだから言い返せない。
…結局、俺達に出来ることは。
「早く戻ってこいよ…馬鹿ナジュ」
必死に声を掛け、呼び掛け。
チョコバームクーヘンや、不気味なお面を傍に置き。
ただナジュが目覚めるように、祈っていることだけなのだ。
…無力な自分が呪わしい。
「…ところで」
と、イレース。
「すぐりさんは何処です?あの人、放課後になると消えますけど…」
…確かに。
俺達みたいに毎日とは行かずとも、たまには顔を出してやっても、バチは当たらんと思うぞ。
すると、令月が答えた。
「『八千歳』はね…らんでぶー、って奴だから」
「…?」
…ランデブー?
何のことだ、それは…。
放課後、俺とシルナ、イレース、令月の四人で、医務室に向かった。
何をしに行ったかなど、言うまでもない。
未だ目を覚まさない、同僚を見舞う為だ。
「…天音」
「皆さん…」
ナジュの眠るベッドの傍らに、天音が座っていた。
浮かない顔だった。
「…相変わらずか?」
「…そうだね」
…そうか。
期待していた訳じゃない。もし俺達がいない間に目を覚ましていれば。
すぐにでも、天音が知らせてくれるだろうから。
その知らせがないってことは、状況に変わりはないということだ。
「ナジュ…」
ナジュの瞳は、固く閉じられたままで。
もう一生、開くことはないのではないかとさえ思えた。
馬鹿言え。
こいつには、言ってやらないといけないことが山程あるのだ。
目を覚ましてもらわなければ困る…。
「全く…とんでもない寝穢さです。困ったものですね」
と、嘆息するイレース。
本当にな。
寝坊にも程があるぞ、ナジュ。
「ナジュ君、これナジュ君のおやつ」
シルナは、持参した見舞いの品…チョコバームクーヘン…を、ナジュの傍に置いた。
「これ美味しいよ〜。これ。早く起きないと腐っちゃうよ〜…」
「…」
チョコバームクーヘンに釣られて起きるのは、お前くらいだ。
更に。
「よいしょ」
「令月…何やってんだ」
「お見舞い」
それがお見舞いか。
令月は、あろうことか、不気味な般若とインディアンを足して2で割ったようなお面を、ナジュの傍に立て掛けていた。
さっきからそのお面持ってて、一体何を持ってるのかと思ったら。
まさか、それがお見舞いの品とは。
「不気味過ぎるだろ…」
「でもこれ、ジャマ王国ではよく病人に送られる見舞い品だよ」
何だと?
見舞い品って言ったら、普通花束とか果物とか…。
鉢植えは縁起が悪いから、渡さない方が良いらしい。
で、ジャマ王国では何が常識だって?
「身体の中の病原体が、このお面を怖がって、その人の身体の中から逃げちゃうようにって、おまじない」
「…成程」
ちょっと納得してしまった自分がいる。
でも、俺はやっぱり嫌だな。
俺が倒れるときがあったら、そのときは花束を頼む。
仮にこのお面に効果があったとして、目が覚めたときこのお面が目の前にあったら、逆に具合悪くなりそう。
…それで。
「天音。…リリスは?」
「…」
天音は、無言で首を横に振った。
ナジュが駄目なら、せめてリリスを通して、ナジュの様子を知れたらと思ったのだが。
残念ながら、それも叶わないらしい。
「何度も呼びかけてはいる。けど…」
…応答はなし、か。
リリスとも、あれっきりだ。
一度出てきて、俺達を罵って、それ以来ナジュの身体を借りて、姿を現すことはなかった。
それもそのはず。
リリスは、俺達のことを完全に、敵認定していた。
ナジュをこんな風にした、張本人達だと。
実際、その通りだから言い返せない。
…結局、俺達に出来ることは。
「早く戻ってこいよ…馬鹿ナジュ」
必死に声を掛け、呼び掛け。
チョコバームクーヘンや、不気味なお面を傍に置き。
ただナジュが目覚めるように、祈っていることだけなのだ。
…無力な自分が呪わしい。
「…ところで」
と、イレース。
「すぐりさんは何処です?あの人、放課後になると消えますけど…」
…確かに。
俺達みたいに毎日とは行かずとも、たまには顔を出してやっても、バチは当たらんと思うぞ。
すると、令月が答えた。
「『八千歳』はね…らんでぶー、って奴だから」
「…?」
…ランデブー?
何のことだ、それは…。