神殺しのクロノスタシスⅢ
聖魔騎士団の協力を取り付けたところで。

「それでは、ここからは私が」

「そうですね」

シュニィとクュルナが、バトンタッチした。

…?

「編成チームのメンバーは、既に決まっています。僭越ながら私が、チームのリーダーを務めさせて頂きます」
 
と、クュルナ。

成程、そういうことだったか。

それで、シュニィと一緒に来たって訳か。

「急で申し訳ないのですが、今夜泊まり込みでら『治療』を始めさせてもらっても良いでしょうか」

何?

「無理なようでしたら、明日また改めて…」

「いや…。構わないけど、何か手があるの?」

「手…と言っても、やってみないことには、効果があるかは分かりませんが…。編成したチームで話し合って、思いついたことがありまして」

…ほう。  

「良いよな、シルナ」

「うん。クュルナちゃんを学院に泊めてもらうよう、イレースちゃんに手配を頼んで…」

「それから、天音さんとも話し合いたいのですが…」

「分かった。すぐ呼んでくる」

さすがクュルナ。話が早い。

助かる。
 
「それでは、後のことはクュルナさんにお願いして…。私は、ここで失礼させて頂きますね」

と、シュニィが立ち上がった。

「あ、待ってシュニィちゃん。私が送ってくから」

すかさず、シルナも立ち上がった。

言うと思った。 

ってか、シルナが言わなかったら、俺が言おうと思ってた。
 
「え?でも」

「駄目駄目。こんな時間にシュニィちゃんを一人で歩かせて、何かあったら、私がアトラス君に殺されちゃうよ」

その通り。
 
魔導を極めたシルナですら、本気になったアトラスに襲いかかられたら、逃げ切れる気がしない。  

何せ、妊娠した妻の為、遠く離れた国境沿いの街エクトルから、走って帰ってきた男だからな。

絶対逃げ切れない。
 
それに。

「アトラス君にもお礼言わなきゃ」

聖魔騎士団からナジュの為に、医療チームの派遣を最終的に決定したのは、他でもないアトラスだ。

学院の代表として、礼を言わねばなるまい。  

シュニィを送って行くついでで申し訳ないが。

「あとのこと、お願いね羽久」

「任せろ」

こうして。

シルナとシュニィは、学院を後にし。

早速俺達は、医務室に向かった。
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