神殺しのクロノスタシスⅢ
クュルナに、詳しい事情を説明し終わった頃。

「成程、そういうことでしたか…。大変でしたね」

「そうなんだよ…。それで、そのまま一ヶ月がたつ。何とかなりそうか?」

「我々でも、話し合って手は考えてあります。それを試してみて…」

…と。

クュルナと解決策を模索していた、

そのとき。

「…ただいま〜…」
 
「うおっ、シルナ?」

何故か、土まみれでボロボロになったシルナが、半泣きで戻ってきた。

そういや、話に夢中で忘れていたが。

いなかったな、お前。

シュニィを家に送って行ってたんだっけ。

それにしては遅かったな。  

「何やってたんだ…?」

「危うく…アトラス君の剣の錆にされるところだった…」

「…?何したんだ、お前…」

「何もしてないよ!」

…とりあえず、ナジュの治療の話を横に置き。
 
シルナの身に何があったのか、詳しく聞いたところによると。

シュニィが、シルナを伴って帰宅すると。
 
シュニィが戻ってきた音を聞きつけて、アトラスが玄関まで走ってきたそうな。  

両腕にアイナを抱き、おんぶ紐でレグルスをおんぶして、二人の子供を寝かしつけるという、イクメン丸出しの格好で。
 
よく寝る良い子達だ。  

それはともかく、シュニィが帰ってきたとき、アトラスは血相を変えていた。
  
「ど、どうしたんですかアトラスさ、」

「大丈夫かシュニィ!一人で帰ってきたのか?」

「え?いえ、この通り、学院長先生に送って頂いて、」

「夜道でシュニィが暴君に襲われてやしないかと、心配してたんだぞ!」

全く人の話を聞かない系男子、アトラス。

「暴君なんて…。私なんて襲う物好きはいませんよ、ましてやアルデン人で…」

「何言ってるんだ!シュニィは、ルーデュニア聖王国三大可愛い者の一人だろう!ちなみに、あとの二人はアイナとレグルスだ」

随分狭い世界だ。
 
相変わらず変わらない惚気を見せるアトラスに、思わず顔を赤らめて閉口するシュニィ。

「無事に帰ってきてくれて良かった。余程迎えに行こうかと、ん?」

「え?」

そのときになって初めて、アトラスは。

シュニィの隣に、シルナがいることに気づいた。  

「や、やっほー。こんばんは。シュニィちゃんを送って…」

「…誰だ貴様は?」

「…は?」

…一応言っとくが。

アトラスは別に、記憶喪失になった訳ではない。
 
外はもう暗く、おまけに、自分の妻の身に何かあったのでは、と気が気でなく待っていた為に。

シュニィの隣にいる男を、無条件で全て敵認定してしまったのである。

「え?え?私シルナだよ、学院長先生だよ。アトラス君ひさしぶ、」

「さては貴様、シュニィがあまりに美人だから、シュニィを付けてきたな!?」

「!?」

アトラスは、すやすや眠るアイナを片手に抱き。

背中には、おんぶ紐でレグルスをおんぶした状態のまま。

もう片方の手で、一般人なら三人がかりでようやく持ち上げられるであろう、巨大な大剣を抜いた。  

「許さん!この不届き者め、シュニィは
俺が守る!」

「えぇぇぇ!?」

「アトラスさん!?学院長先生ですよ!シルナ学院長です!」

シュニィが、必死に夫を止めようとするも。

「大丈夫だシュニィ。下がってるんだ。お前を付け狙う不届き者は、俺が成敗してくれる!覚悟しろ!」

「え、ちがっ…。私はシュニィちゃんを送ってきただけで、」

「問答無用!!」

「嫌ぁぁぁ助けてぇぇぇぇ!!」

…みたいな、経緯で。

現在の、ボロボロシルナが完成したらしい。

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