神殺しのクロノスタシスⅢ
…来ておいて何だけどさ。

…何?何で俺達、こんなところにいるの?

「そりゃあ僕の快気祝いですよ。学院長が言ってたじゃないですか。『ナジュ君も無事復帰したことだし、皆で快気祝いに行こう!』って」

すかさず俺の心を読んだナジュが、解説してくれた。

人の心を勝手に読む悪癖は、相変わらず健在なようだな。

元気そうで何より。

「で、何で回転寿司なんだよ」

「だって、本当はスイーツバイキングに行きたかったけど…イレースちゃんが、『自分の好みだけじゃなくて、他人の好みも考えなさい』って怒るから…」

「当たり前です。ナジュさんの快気祝いなのに、あなたが一番楽しんでどうするんですか。図々しい」

イレース、辛辣。

別にナジュも、特別寿司好きって訳でもなかろうに。

「しかも回るお寿司って、ケチですよねー学院長の癖に。そこは学院長のポケットマネーで、回らない寿司を奢ってもらいたかったですよ」

「ぎくっ」

耳が痛いらしいシルナ。

それな。

お前天下のイーニシュフェルト魔導学院の学院長だろ。

それがお前、同僚の快気祝いに回転寿司って。

別に回転寿司を馬鹿にするつもりはないが、そこは…なぁ?

奮発してもらいたかったもんだよ。

しかし。

「だってお高いし…。それに、回らないお寿司屋さんには、スイーツが置いてないじゃない!」

「…」

「最近の回転寿司のスイーツラインナップは凄いよ!チョコパフェ、フォンダンショコラ、プリンアラモード…!もう目移りしちゃうよね!」

寿司を食え、寿司を。

さては貴様、スイーツが食べたいが為に回転寿司を選んだな?

「まぁ、僕ら食事する必要ないですし。僕も特別寿司にこだわってる訳じゃないから、何でも良いんですけどね」

と、ナジュ。

良かったな、シルナ。

ナジュが、「焼肉食べ放題行きません?」とか言わなくて。

スイーツ食べられないところだったな。

そんな訳で。

回転寿司屋に来た一行である。

とはいえ、残念ながら、天音はいない。

一応学院には、シルナ分身が残っているものの。

何かあったときの為に、一人くらい本物の教師が必要だろうってことと。

天音は保健室の先生だから、余計に。

最近の回転寿司は持ち帰りも出来るらしいから、彼の分は持ち帰ろう。

「よし!皆、今日は私の奢りだからね!皆好きなもの食べてね〜」

イーニシュフェルトの学院長が、回転寿司で太っ腹になるな。

全くしみったれた奴だよ。
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