神殺しのクロノスタシスⅢ

ところで、回転寿司って。

多分大多数の人にとっては、お馴染みだと思うんだけど。

「回転寿司って言うから、回りながら食べるのかと思ったけど、成程、寿司が回ってるんだね。考えたね〜！」

人生初めての回転寿司らしく、好奇心丸出しのすぐり。

どうやら物凄い誤解をしていたらしいが、無事解けたようで何より。

回りながら食えるか。

更に。

「『八千歳』…！気をつけて。このお店、手を洗うところが物凄く熱い」

「うわっ、湯気出てるじゃん！ルーデュニア人の皮膚どうなってるの？」　

「きっとこれは、寿司を食べる為に必要な試練なんだ。食べる前に万全な手の殺菌消毒を…」

「待てお前ら。それ手洗うところじゃない」

コントみたいなやり取りをするな。

そうだな。教えなかった俺達が悪い。

「お茶。それお茶淹れるところだからな」

「お茶…？試練じゃないの？」

何だよ試練って。

それ乗り越えるまで寿司食えないなら、とっくに店潰れてるよ。

「手はおしぼりで拭け」

「うん」

「ねぇ、これどーやって食べるの？」

首を傾げるすぐり。

「レーンに寿司が回ってるだろ？」

「うん」

「そこから好きなの取って食べれば良いんだよ」

「へぇ〜！これ全部好きに取って良いの？許可制とかじゃなくて？」

何だよ許可制って。

一皿ごとに許可取ってたら、腹一杯になる前に店閉店するわ。

「良いよ、好きに取っても」

「成程、ルーデュニア人って画期的なこと考えるね。でも、何で寿司にこだわるんだろう？」

何？

「回転するんなら、寿司じゃなくても、トンカツでもざるそばでも何でも良いじゃん。何でわざわざ寿司だけ回すの？」

「…」

…本当にな。

何故人類は、寿司は回すのに、他の食べ物は回さないのだろう。

何でもあって良いはずだよな。

回転定食屋とか。回転ケーキ屋とか。

「何で寿司だけなの？おかしくない？」

改めて聞かれると、確かに答えに窮する質問。
　
子供って凄いな。無邪気、無知故に、俺達が思いもよらないような疑問を抱く。

しかし。

「いちいち面倒臭いことを考えるな。そういうもんなんだよ。食え」

黙って食え。

寿司は回る。そういうもんなんだよ。

そういうもんだと思っとけ。

「ふーん。これ、こんな低速じゃなくてもっと高速で回ったら面白いだろうねー」

誰も取れないじゃないかよ。

「自分の手が届く範囲に寿司があるときに、素早く決断して取らなければならない…。俊敏性と素早い判断力を要する店。それが回転寿司…！」

令月もなんか変なこと言ってるし。

気にしないで食えよ。

お前ら自由なこと考え過ぎだろ。　

そして。